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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)9747号 判決 1998年11月26日

大阪市中央区東心斎橋一丁目七番九号

原告

株式会社アンジェラ

右代表者代表取締役

田中秀二

右訴訟代理人弁護士

米田宏己

西信子

北薗太

山崎邦夫

福岡市南区筑紫丘一丁目二三番七号

被告

株式会社アンフィニー

右代表者代表取締役

豊田幸一

福岡市中央区赤坂一丁目一一番一号 プロスパー赤坂四F

被告

ルネローランこと

鉄穴英明

福岡市中央区天神三丁目二-一九 天神久保田ビル三階

被告

ラパスモードこと

井上竜二

福岡県粕屋郡志免町桜丘五丁目八番五号

被告

豊田幸一

右四名訴訟代理人弁護士

大神周一

大谷辰雄

福岡市西区姪の浜六丁目一二番一三号

被告

梅津貞政

主文

一  被告株式会社アンフィニーは、別紙物件目録(二)1ないし7記載の補整下着を販売してはならない。

二  被告株式会社アンフィニー、被告豊田幸一及び被告梅津貞政は、原告に対し、各自金一一六七万一二六三円及びこれに対する平成七年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告株式会社アンフィニー、被告豊田幸一及び被告梅津貞政に対するその余の請求及び被告ルネローランこと鉄穴英明、被告ラパスモードこと井上竜二に対する請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告と被告株式会社アンフィニー、被告豊田幸一及び被告梅津貞政との間においては、原告に生じた費用の二分の一を被告株式会社アンフィニー、被告豊田幸一及び被告梅津貞政の負担とし、その余を各自の負担とし、原告と被告ルネローランこと鉄穴英明及び被告ラパスモードこと井上竜二との間においては原告の負担とする。

五  この判決の第二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  主文第一項同旨

二  被告らは各自、原告に対し、金八〇〇〇万円及びこれに対する平成六年五月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  仮執行の宣言。

第二  事案の概要

一  基礎となる事実(当事者間に争いがない)

1  原告は、婦人用下着の企画、製造、販売及び輸出入を主たる業とする株式会社(平成三年一二月一二日設立)である。

被告株式会社アンフィニー(以下「被告アンフィニー」という)は、下着の企画、製造、販売を業とする株式会社(平成四年七月二三日設立)であって、後記3のとおり、原告の販売代理店であった者である。

被告ルネローランこと鉄穴英明(以下「被告鉄穴」という)及び被告ラパスモードこと井上竜二(以下「被告井上」という)は、いずれも補整下着の販売を業とする者で、被告アンフィニーの下部代理店である。

被告豊田幸一(以下「被告豊田」という)は、平成三年一〇月一五日設立中の原告に入社し、平成五年一〇月三一日に退社するまで原告の従業員であった者であり、一方、平成四年七月二三日被告アンフィニー設立とともにその取締役となり、平成五年一二月二一日から現在まで被告アンフィニーの代表取締役である(原告は、被告豊田が被告アンフィニーの代表取締役に就任したのは平成四年七月二三日であると主張するが、甲第三号証の1・2及び弁論の全趣旨によれば、平成五年一二月二一日と認められる)。

被告梅津貞政(以下「被告梅津」という)は、被告アンフィニー設立の平成四年七月二三日から平成六年七月一四日までの間、被告アンフィニーの代表取締役であった(被告梅津を除く被告四名を、以下「被告アンフィニーら」という)。

2  原告は、平成四年四月一日から、別紙物件目録(一)の1ないし7記載の補整下着(以下、順に「原告商品1」、「原告商品2」、「原告商品3」、「原告商品4」、「原告商品5」、「原告商品6」、「原告商品7」といい、総称するときは「原告商品」という)に「マリアマリアン」のブランド名を付して、販売している。その販売方法は、原告を総発売元とする代理店契約を締結した代理店又はその下部組織のサロンにおいて、ファッションコーデイネーターの体型診断や助言のもとに客が原告商品のサンプルを試着して購入を決定するという試着販売システムによっている。

3  原告は、平成四年三月二五日、被告アンフィニーとの間で、被告アンフィニーを九州地区における原告商品の販売代理店とする代理店基本契約(以下「本件代理店基本契約」という)を締結し、同年四月一四日から平成六年六月三〇日までの間、被告アンフィニーに対して原告商品を継続して供給した。なお、右契約締結当時、被告アンフィニーは、既に会社の実体を備えてはいたものの、未だ設立登記を経由していなかったので、本店所在地及び役員が被告アンフィニーと同一の訴外有限会社エム・オー・イレ(以下「エム・オー・イー」という)の名義で契約書(甲二)を作成した。

4  その後、平成六年になって、被告アンフィニーは、別紙目録(二)の1ないし7記載の補整下着(以下、順に「被告商品1」、「被告商品2」、「被告商品3」、「被告商品4」、「被告商品5」、「被告商品6」、「被告商品7」といい、総称するときは「被告商品」という)に「ルネローラン」のブランド名を付して販売を開始し、被告鉄穴及び被告井上並びに訴取下げ前の共同被告株式会社マルガリータ(以下、単に「マルガリータ」という)は、そのころ、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売するようになった。

被告アンフィニーが被告商品の販売を開始した時期について、原告は、平成六年五月一〇日であると主張するのに対して、被告アンフィニーらは、同年四月二八日であると主張しており、当事者間に争いがある(但し、当初、原告は、平成六年五月一日施行の平成五年法律第四七号による改正後の不正競争防止法二条一項三号、三条、四条に基づく差止請求及び損害賠償請求を主位的請求としていたため、この点が重要な争点となっていたが、後に、これを取り下げて後記二のとおりの請求としたので、右販売開始時期は争点ではなくなった)。

5  原告は、平成六年七月七日到達の内容証明郵便により、被告アンフィニーに対して、被告商品の販売中止及び廃棄を求めた。

二  原告の請求

原告は、被告商品は原告商品の形態を模倣した商品であり、このような商品を販売することは著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為に当たると主張して、被告アンフィニーに対して、本件代理店基本契約に基づき被告商品の販売の差止めを求めるとともに、主位的に、本件代理店基本契約の不履行に基づく損害賠償を、予備的に、不法行為に基づく損害賠償(予備的主張その一)又は原告が損害賠償請求権を有する相手方である訴外オペア株式会社(以下「オペア」という)が被告アンフィニーに対して有する損害賠償請求権の代位行使による金銭の支払い(予備的主張その二)を求め、

被告鉄穴及び被告井上に対して、不法行為に基づき損害賠償を求め、

被告豊田及び被告梅津に対して、商法二六六条の三に基づき損害賠償を求め、更に、被告豊田に対しては、予備的に雇傭契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求めるものである。

三  争点

1  被告商品は、原告商品の形態を模倣したものであるか。

2  被告アンフィニーが被告商品を販売したことは、本件代理店基本契約に違反し、又は不法行為を構成するか。原告は、被告アンフィニーに対して、本件代理店基本契約に基づき被告商品の販売の差止めを請求することができるか。

3  被告鉄穴及び被告井上は、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売したことにつき、原告に対して不法行為責任を負うか。

4  被告豊田及び被告梅津は、被告アンフィニーの行為について商法二六六条の三所定の責任を負うか。被告豊田は、雇傭契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を負うか。

5  被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に、支払うべき損害金の額。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(被告商品は、原告商品の形態を模倣したものであるか)について

【原告の主張】

1 補整下着とは、プロポーションをよくするための下着で、大別してブラジャー、ガードル及びボデイスーツの三種類があり、ブラジャーはバストの補整を、ガードルはウエスト・腹部・ヒップ・太股の補整を、ボディスーツはブラジャーとガードルを一体化したもので、胴部全体の補整を目的とするものであるが、この実用的機能だけではなく、レーシーなファンデーションで女らしさを楽しんだり、ソフトなファンデーションで心まで軽くなったりといった内面的なおしゃれとしてのブイーリングやムードを高める精神的機能も有している。そのため、他社製品との差別化を図るために、実用的機能面では、より身体にフィットしてボディラインを整えるのに適した身生地の選択、贅肉を押し込んだ状態を保持するための部分的な形状構造のデザイン、精神的機能面では、レースの選択、レース模様の配置位置、大きさ、形状及び重ね着した場合の全体的統一性や色彩等の選択に創意を凝らすことが必要である。

原告商品は、原告がそのような創意を凝らして開発したものであり、他社製品との差別化のため、従来の同種製品には見られないコンセプトに基づくを記(一)の(1)ないし(5)の共通した形態上の特徴を有し、かっ、それぞれ(二)の(1)ないし(7)の個別的な形態上の特徴を有している。

(一) 原告商品に共通した形態上の特徴

(1) 広幅レース(オールオーバーレース)を用いたこと

従来の補整下着になボーダーレースが用いられていたところ、このレースは幅が四インチ、六インチ、八インチの三種類に限られており、幅が狭いので、広い部分には用い難く、また、柄に方向性があるため、ブラジャー、ウエストニッパー、ロングガードル等を重ね着した場合、柄に統一性がなく一体感がなくなるという難点があった。

原告商品は、補整下着業界で初めて、広幅レースを採用して、右の難点を克服したものである。すなわち、広幅レースは、約一三五cmの幅の中にモディフアイした同一花柄を連続的に配列したものであるため、広い部分にも用いやすく、また、柄に方向性がなく、重ね着した場合、柄に統一性、連続性の一体感を作出することができる。そして、原告は、数多く存在する広幅レースの中から、特に訴外豊栄繊維社製のNO.三八一〇(蓮華様の花とペーズリー模様状の葉っぱをデザイン化したものを組み合わせた柄)を採用した。

(2) フロントパネルのV型一体化設計

従来の補整下着は、重ね着するのが常態であるにもかかわらず、重ね着した場合の統一性、一体化に対する配慮工夫がなされていなかった。

原告商品は、原告商品1ないし7をどのように組み合わせて重ね着しても、フロントパネルにおけるレースで装飾された部分がV型ゾーン(デルタ形状)として一体化するように構成されている(なお、このVゾーンの一体化のためにも広幅レースの採用は不可欠であった)。

(3) 広幅レースの辺に細幅レースを飾り付けたこと

原告商品は、広幅レースの装飾部分の辺に約一〇mm程度の細幅レースを飾り付け、広幅レースの装飾部分を立体的に浮かび上がらせている。

(4) 身生地に特殊な綿混トリスキンを採用したこと

従来の補整下着に使用されていた身生地は、合繊一〇〇%の経編地が主流であり、縦の伸縮度を一〇とすると横の伸縮度は二ないし三程度しかなく固いため、着用すると息苦しく、長時間着用するのに難点があった。

原告は、オペアの補整下着販売部門を独立させる形で設立された会社であるところ、原告及びオペアは、体型補整の一番有効な機能を追求しつつ、ソフトで長時間着用に耐える商品を作るために、東レグループの生地メーカーである訴外マツモト・テキスタイル株式会社(以下「マツモト・テキスタイル」という)の協力のもとに、縦の伸縮度を一〇とすると横の伸縮度が七ないし八もあり、かつ、吸湿性に富む綿糸を編み込んだ「綿混トリスキン」という身生地の開発に成功し、補整下着業界で初めて綿混トリスキンを採用した。その結果、着用感が日常的な下着とほぼ同様でありながら、十分な補整効果を得ることに成功したのである。そして、右のような開発の経緯から、原告は、マツモト・テキスタイルとの間で、綿混トリスキンを補整下着業界では原告以外に出荷しない旨の取決めをしている(なお、「トリスキン」という商標については、訴外東レ・デュポン株式会社が商標権の独占的通常使用権を有しており、原告は、同社から再使用許諾を受けて使用している)。

(5) 色彩として光沢に富む藤色がかったシルバーグレーを採用したこと

従来の補整下着では、色彩として、明るいパープル、ブラウン、ピンク系統が多く採用されていた。

原告商品は、アウターウェアの色傾向を参酌して、大人の感覚で若干セクシーな要素を有する落ち着いた色であるグレーを採用し、身生地のトリスキンの光沢ともよく合い、光沢に富むやや藤色がかつたシルバーグレーとしたものである。

(二) 原告商品の個別的な形態上の特徴

(1) 原告商品1(ボディスーツ)

<1> 胸部から下腹部にわたり、大きくV型にロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けている。

<2> ヒップ部分の補整のために、ヒップの二山がくっきりと出るよう三枚ハギで中心線をいせこんだ設計となっている。

<3> グリッパー(股下のマチの留め金具)の位置を、着用時の不快感回避のため他社製品より上位置としている。

<4> 着用前のカップの形の造形のため、ワイヤ入りフルカップ部分の裏面全体に不織布を当てている。

<5> ブラジャーカップに入れた脂肪の逃げを防ぐため、後身頃の上辺部を限界いっぱいに上げ、しかも直線状としている。

(2) 原告商品2(ボディシェーパー)

<1> 原告商品1の<1>、<4>、<5>と同じ。

<2> 裾部全周にわたり、カメリヤ柄のインチ幅レースを飾り付けている。

(3) 原告商品3(スリーインワン)

<1> 原告商品1の<1>と同じ。

<2> 従来の他社製品は、ガーターベルト機能を有し、裾レースが付いていたが、原告商品3は、ガーターベルトの機能を除き、裾レースを省いている。

(4) 原告商品4(ブラジャー)

<1> カップを含む表面の全面に、ロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その胸元上辺の縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けている。

<2> 従来の他社製品は、アンダーテープが一〇ないし一五mm幅と狭く、そのため脂肪の下垂を止めるため強く締める必要があり圧迫感があったが、原告商品4は、三〇mmの広い幅のテープを採用したため、脂肪の下垂防止効果も高く、また、広幅であるため圧迫感が平均化して着用感に優れている。

<3> 原告商品1の<4>と同じ。

(5) 原告商品5(ロングガードル)

<1> 前面中央部股下に向けてV型に、ロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けている。

<2> 裾部分の身生地の上部に、アイリスペーズリー柄の栄レース社製の四インチレース(両山)NO.一一四〇〇九をそのまま広く配している。従来の他社製品は、同種レースを上下に二分した細幅の片山レースを使用していた。

<3> 原告商品1の<2>と同じ。

(6) 原告商品6(ショートガードル)

<1> 原告商品5の<1>と同じ。

<2> 原告商品1の<2>と同じ。

(7) 原告商品7(ウエストニッパー)

前面中央部にV型に、ロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けている。

2 被告商品1、2、3、4、5、6、7は、それぞれ対応する原告商品1、2、3、4、5、6、7の各形態上の特徴をすべて具備しており、いわゆるデッドコピーである。

3 被告アンフィニーらは、原告商品は独自性がなく、他社製品の模倣である旨主張するが、仮に原告商品の販売開始前に、被告アンフィニーら援用のスワニー株式会社製やマルコ株式会社製の補整下着が存在していたとしても、原告商品は、フロントパネルのV型ゾーンだけではなく、前記1のとおりの創意・工夫をしたものであるから、それらの模倣品ではないのであり、これまで右業者等から原告商品の販売差止めや損害賠償の請求を受けたことはないし、法的にも受ける筋合いはない。

原告商品とスワニー株式会社製の「メルフィーヌ25」との相違は、別紙「メリフィーヌ25と原告商品との相違表」記載のとおりである。

【被告アンフィニーらの主張】

1 原告商品の形態は従来から販売されていた他社製品の形態と共通していて独自性はないから、仮に、被告商品が原告商品に類似している点があったとしても、被告商品をもって原告商品の模倣であるということはできない。すなわち、補整下着は、おしゃれのためにデザイン性や色調が重視される一般の婦人服やランジェリーとは異なり、体型を補整し維持するための下着であることから、機能性が重視される。このため、補整下着の形態は、その機能から必然的に決定されるもので、どの製品も似かよったデザインになることはやむをえない性質のものである。このことは、弁理士高松利行の意見書(乙四四)に資料として添付されている写真により裏付けられる。原告商品と他社製品(マルコ株式会社、スワニー株式会社、株式会社セシール、株式会社ベスタイル、プロフィット株式会社、株式会社ソヌール)との形態が極めて類似していることは、比較写真(乙三九)により明らかである。原告代表者や証人安部清明も、このことを認める旨の供述をしている。特に、スワニー株式会社製の補整下着「メルフィーヌ25」の形態は、原告商品とほとんど変わりがない。マルコ株式会社製の補整下着は、原告商品の一番の特徴とされる腹部のV型ゾーン等多くの点で共通している。

そして、右のように原告商品の形態とほとんど変わりのない形態を有するスワニー株式会社製の「メルフィーヌ25」は、平成四年二月二九日以前から販売用ビデオ(乙六〇)が販売店有限会社エル・サージュに配布されており、原告商品の形態と極めて類似した形態を有するマルコ株式会社製の補整下着は、その「マルコ本社株式会社」(平成三年三月一五日にマルコ株式会社に合併された)との記載のあるパンフレット(乙五七)が右合併の日以前に配布されていた。このように、原告商品は、原告商品の販売開始時期である平成四年四月一日以前に既に販売されていたスワニー株式会社製やマルコ株式会社製の補整下着と形態が類似しているにもかかわらず、当時これら先行する補整下着業者から原告商品にクレームがついたという形跡は全くないが、これは、先行する補整下着の形態に独自性がないからにほかならない。したがって、これら先行する補整下着に似かよった商品である原告商品にも、他社製品と一線を画するだけの独自性はないということができるのである。仮に、原告商品に何らかの独自性が認められるとすれば、それは先行する他社製品に由来するものであり、これを模倣したものであるから、原告自身が法的保護を求めることができない。

原告が、具体的に、原告商品に共通した形態上の特徴あるいは原告商品の個別的な形態上の特徴であると主張する点についていえば、以下のとおりいずれも原告商品独自のものではない。

(一) 原告商品に共通した形態上の特徴について

原告商品が、(1)豊栄繊維社製のNO.三八一〇のレースを使用していること、(2)V型ゾーンを採用していること、(3)広幅レースの辺に細幅レースが付けられていること、(4)身生地に綿混トリスキンを使用していること、(5)色彩として光沢に富む藤色がかったシルバーグレーを採用していることは認める。

しかしながら、いずれも原告商品独自のものということはできない。すなわち、(1)の点については、従来の補整下着には柄に統一性がなく一体感がなくなるという難点があったわけではないし、原告商品が補整下着業界で初めて広幅の、豊栄繊維社製のNO.三八一〇のレースを採用して右難点を克服したというわけでもない。(2)の点が原告商品独自のものでないことは明らかである(乙三九)。(3)の点は、従来から一般になされている装飾の手法である。(4)の綿混トリスキンは、従来から株式会社レナウン・エスパ等により補整下着の身生地として一般的に使用されている。(5)の色彩も従来から一般的に用いられている色である。

(二) 原告商品の個別的な形態上の特徴について

(1) 原告商品1(ボディスーツ)

<1>の、胸部から下腹部にわたり、大きくV型にロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けているとの点は認めるが、一般的装飾である。

<2>の、三枚ハギで中心線をいせこんだ設計となっていることは認めるが、膨らみをもたせるための技法として珍しいものではない。

<3>の、グリッパー(股下のマチの留め金具)の位置を着用時の不快感回避のため他社製品より上位置としているとの点は否認する。

<4>の、ワイヤ入りフルカップ部分の裏面全体に不織布を当てているとの点は認めるが、他社製品を参考にしたものである。

<5>の、ブラジャーカップに入れた脂肪の逃げを防ぐため、後身頃の上辺部を限界いっぱいに上げ、しかも直線状としているとの点は認めるが、他社製品にも同じ形態のものがある。

(2) 原告商品2(ボディシェーパー)

原告商品1の<1>、<4>、<5>と同じ点については、右(1)のとおりである。

<2>の、裾部全周にわたりカメリヤ柄のインチ幅レースを飾り付けているとの点は認めるが、一般的装飾である。

(3) 原告商品3(スリーインワン)

原告商品1の<1>と同じ点は、前記(1)のとおりである。

<2>の、原告商品3はガーターベルトの機能を除き、裾レースを省いているとの点は認めるが、最近のものは、裾レースの無い方が一般的である。

(4) 原告商品4(ブラジャー)

<1>の、カップを含む表面の全面にロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その胸元上辺の縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けているとの点は認めるが、一般的装飾である。

<2>の、原告商品4は、三〇mmの広い幅のテープを採用したため、脂肪の下垂防止効果も高く、また、広幅であるため圧迫感が平均化して着用感に優れているとの点は不知。

<3>の、原告商品1の<4>と同じ点は、前記(1)のとおりである。

(5) 原告商品5(ロングガードル)

<1>の、前面中央部股下に向けてV型に、ロータスペーズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けているとの点は認めるが、一般的装飾である。

<2>の、裾部分の身生地の上部に、アイリスペーズリー柄の栄レース社製の四インチレース(両山)NO.一一四〇〇九をそのまま広く配しているとの点は不知。裾レースをどのようにするかは、一般に施される装飾からの選択の問題である。

<3>の、原告商品1の<2>と同じ点は、前記(1)のとおりである。

(6) 原告商品6(ショートガードル)

<1>の原告商品5の<1>と同じ点は、右(5)のとおりであり、<2>の原告商品1の<2>と同じ点は、前記(1)のとおりである。

(7) 原告商品7(ウエストニッパー)

前面中央部にV型に、ロータスペレズリー模様の豊栄繊維社製の広幅レースNO.三八一〇を配し、その縁取りに約一〇mmの細幅レースを飾り付けているとの点は認めるが、一般的装飾である。

2 デッドコピーとは、既存の商品に何らの改良・工夫を加えることなく、単にこれを真似ただけの商品をいう。

被告商品は、平成五年九月一一日に福岡市で開催された被告アンフィニーの代理店会議において、原告商品について、縫製が粗く弱い、身につけるとカップの間が開く、スリーインワンの丈が長すぎる、生地の肌触りが悪いとのクレームがつけられ、これに対処するため商品に改良を加える必要性が生じていた中で、原告商品は国内で生産されているといいながら中国の大連の縫製工場で生産されており、しかも、原告はその事実を隠蔽するため中国製であることを示す商品タグを切り取って被告アンフィニー等代理店に販売していたことが判明したことから、独自の商品に切り替えることを余儀なくされた結果、被告アンフィニーが既存の原告商品や他社製品多数を研究し、改良・工夫を加えて開発したものである。被告商品が原告商品と異なる点は、正面レース部分のカットの幅を広くとっていること、カップ部分が開かないようにするための裏当て、スリーインワンの丈の短縮、縫製の強化、裏生地、生地の色合い等多くの事項に及ぶものであり(乙三一)、被告商品は原告商品のデッドコピーではない。

被告アンフィニーの右改良行為は、いかにして原告商品と紛らわしい物を作るか(デッドコピー)ということではなく、客の苦情に応えるべくいかにして原告商品より良い物を作るか(自由競争)ということであり、デッドコピーとは本質的に異なる行為であって、模倣ではないのである。

【被告梅津の主張】

原告の主張は争う。

二  争点2(被告アンフィニーが被告製品を販売したことは、本件代理店基本契約に違反し、又は不法行為を構成するか。原告は、被告アンフィニーに対して、本件代理店基本契約に基づき被告商品の販売の差止めを請求することができるか)について

【原告の主張】

1 原告と被告アンフィニーとの間において平成四年三月二五日締結された、被告アンフィニーを九州地区における原告商品の販売代理店とする本件代理店基本契約の一条によれば、被告アンフィニーは、「原告の本製品に誠意をもって販売することを約束し、著しく名誉、信用を失墜させる行為をしない」債務を負っているところ、被告アンフィニーは、平成六年五月一〇日以降現在に至るまで、原告商品のデッドコピーたる被告商品を被告鉄穴、被告井上外に販売して流通市場におき、原告の名誉、信用を著しく失墜させているから、本件代理店基本契約一条に違反しており、原告は、被告アンフィニーに対し、債務不履行による損害賠償を請求できるとともに、右条項に基づき被告商品の販売の差止めを請求することができる。すなわち、原告は、原告商品に前記一【原告の主張】1のような形態上の特徴を持たせ、身生地については補整下着業界では唯一綿混トリスキンを採用してこれを止め柄とすることにより他社製品との差別化を図り、追随する商品は出ないとして原告商品の営業展開をしてきたところ、被告アンフイニーが発売後二年足らずでいとも簡単に原告商品のデッドコピーたる被告商品を製造、販売するようになったため、代理店から「追随する商品は出ないと言っていたのに、嘘であった」という理由等により、代理店契約の解約や、契約維持のために仕入率の低減を要求され、これに応じざるをえなくなったのであり、著しく原告の名誉、信用を失墜させられた。

また、後記2のとおり、原告商品を開発したのは原告であり、仮に原告でないとしても、原告は、原告商品の製造販売メーカーであり、デッドコピー商品たる被告商品の製造販売によって、原告自身の従前の販売経路の喪失や製造販売メーカーとしての信用失墜という不利益を被っているのであり、加えて、被告アンフィニーは、原告が作成した代理店営業用のマニュアル(甲七七)及びインストラクター教育用のマニュアル(甲七八)をそっくりそのまま盗用したマニュアル(甲七九)を作成して原告の著作権を侵害しているし、更に、原告商品のスターターキット(試着用のサンプル商品)を使用して被告商品の販売活動をしており、その行為は、自由競争の範囲を逸脱して営業上の良俗に反するから、違法性が明らかであり、不法行為を構成する(予備的主張その一)。

2 被告アンフィニーは、原告商品を開発し商品化したのはオペアであつで原告ではないから、被告アンフィニーは原告に対して何ら民事上の責任を負うものではない旨主張し、その根拠として、原告商品を着用したモデルの写真撮影が行われたのが、原告の設立登記前の平成三年一二月三日である点を挙げる。

しかしながら、かかる主張は本件代理店基本契約に基づく差止請求に対しては抗弁たりえないし、そもそも、会社においてはその設立登記前から設立中の会社として実体法上存在し、開業準備行為を行うことは自明の理であり、原告もまた、次のとおり、その設立登記前から原告商品の開発・商品化に向けて準備し、現に原告商品を開発・商品化したのである。オペアは、原告の実質的指示の下に指示どおり製造工程を担う下請であり、製造者は原告自身である。

(一) 開業準備

(1) 平成三年一〇月一五日、被告豊田、訴外吉田敬二、同西山聖子、同西山眞由美及び同大井美穂を社員又はパートとして雇用し(甲八二の1~4)、給料を支払っている(甲八三の1の1~5)。

(2) 平成三年一一月七日、原告の本店所在地である大阪市中央区東心斎橋一-七-九心斎橋井上ビル四階四〇三号室を賃借し(但し、賃貸借契約書〔甲八四〕は、賃貸人が会社法人との契約締結を希望したことから、原告の発起人である訴外山本勝三名義ではなく、オペアの関連会社で企画を業とする訴外株式会社アスターメイト〔以下「アスターメイト」という〕名義で作成した)、同月一一日、右賃貸借契約の保証金及び日割賃料の合計八〇八万六五〇〇円を支払った(甲八五)。

(3) 同月一二日、アスターメイト名義で電話加入権の申込みをし(甲八六)、同月一三日、原告名義で求人誌「とらばーゆ」に営業女性スタッフの募集広告(甲八七の3)を申し込む(甲八七の2)とともに、原告名義で日経流通新聞に代理店募集広告(甲八八の3)を申し込んだ(甲八八の2)。

(二) 商品開発・商品化の具体的作業

(1) 訴外吉田敬二、同西山聖子らが中心となって、平成三年一一月中旬ごろまでに、<1>素材について、身生地は、東レのトリスキンに綿一〇〇単子を二一〇デニールのスパンデックスでカバーリングさせ、ハードとソフトの中間であるミディアムで肌に馴染みやすい綿混素材を、業界で初めての展開素材として採用し、止め柄として約定する、四cm幅レーシーリバーレースNO.一一四〇〇九、モチーフNO.一二〇Cも止め柄として、独自性と差別化を出す、<2>色について、旭化成、鐘紡のファッション研究機関のアウターの最新情報を参考にして、補整下着業界で初めてトレンド色を採用する、<3>形状について、補整下着として具備すべき機能性と独自性とを持ち、差別化要点を個々の商品に取り入れながら、無理なく補整し、理想的体型を構築する、また、女性の美意識に応える美しさを表現し、かつ、トータルコーディネート演出を設計思想として位置づけ、形状を作成する、という原告商品に共通した開発概念適まとめ、また、個々の商品について、別紙「原告商品の開発概念表」1ないし7記載のとおりの開発・商品化概念、及びいずれの商品を組み合わせて着用しても、前面のVゾーンが一貫性をもって表現されるように計算する(他社の商品においてもVラインを採用したものはあるが、原告は意図的にすべての組合せでVラインを整合性を持って表現することを意識し、計算された商品にして独自性を出す)というトータルコーディネートの概念をまとめた。

(2) 訴外吉田敬二、同西山聖子らは、右開発概念に基づいて具体的な形にする作業に入り、アスターメイトに対し、使用資材については資材明細により、形状についてはラフスケッチにより、仕上がり寸法については規格明細により、縫製上の注意点(たとえば、強度を要する箇所については、縫い代を多くとるなど)も併せて具体的に指示し、アスターメイトは、この指示に忠実に従って、下請実務として型紙、規格書、仕様書を作成し、平成四年一月末日、これらを平成三年一二月一二日に設立登記を経由した原告に提出した(甲八九)。なお、アスターメイトは、撮影用サンプルが数枚必要になったことから、略式で型紙を作製し、資材の一部は代替品を使用して、規格・仕様で撮影に耐えるレベルで平成三年一一月三〇日サンプルを作製し、同年一二月三日、モデルに着用させて写真撮影を行った(甲一〇)。

(三) オペアに対する原告商品の製造委託

原告は、アスターメイトから提出された型紙等に基づき、オペアに対して原告商品の製造を委託した。発注の形態は、原告が提示した型紙・規格書・仕様書で規定された商品を、原告が指定する納期に、原告が指示した品目・品番の明細どおりの数量を生産して全量を原告に納入するというもので、原告が全量の引取り責任を持つ、いわゆる「止め商品」である。

3 仮に、原告商品を開発・商品化したのが原告ではなく、オペアであったとしても、原告は、原告がオペアに対して有する損害賠償請求債権を保全するために、オペアが被告アンフィニーに対して有する損害賠償請求権を代位行使するものである(予備的主張その二)。

すなわち、原告商品の開発・商品化権者であるオペアは、被告アンフィニーによるデッドコピー商品たる被告商品の市場流通行為によって、原告商品の販売経路を喪失し、逸失利益の損害、信用損害を含む無形損害を被ったところ、原告商品の独占的販売権者である原告は、オペアが被告アンフィニーによる被告商品の市場流通行為を差し止めないという不作為によって、販売経路喪失などの損害を被ったため、オペアに対して損害賠償請求権を有している。そして、オペアは、平成八年一二月九日、大阪地方裁判所において破産宣告を受け(甲八一)、無資力であるから、原告は、民法四二三条に基づき、オペアに対する損害賠償請求権を保全するために、オペアが被告アンフィニーに対して有する損害賠償請求権を代位行使する。

4 被告アンフィニーは、原告がかつて原告商品のうち約六割を占める中国で縫製した商品について行っていた「中国製」とのプリントネーム切断行為は不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という)四条に違反し、このような法律違反者に対して法的保護を与える必要はない旨主張する。

しかし、まず、原産国の表示義務はないとするのが実務及び通説であるから、プリントネームの切断行為は違法ではない。しかも、被告アンフィニー援用の運用細則(乙四七)は、昭和四八年に定められたものであり、産業の空洞化がいわれて久しい昨今において、単に「縫製」をしただけの国をもって、実質的な変更をもらたす行為が行われた国、すなわち商品の品質、性能の決定に最も貢献した国として原産国とすることは、規格、資材手当等ほとんどを日本で行っている場合に、消費者やメーカーの認識とあまりにもかけ離れてしまう。原告は、公正取引委員会から、法律上の措置は受けず、一番軽い行政指導である口頭注意を受けたのみである(乙四五)。しかも、原告は、平成四年一〇月以降は、事業者名を表示していないプリントネームを付け、平成六年九月以降は大連縫製分については中国での縫製の事実を明記した下げ札を付けて、原告商品を販売している。

更に、原告商品の一部に中国縫製のものがあることは、平成三年一二月当時から、被告豊田、被告梅津の知悉していたところであり、プリントネームの切断行為は、平成四年四月の販売当初より、右被告両名の了解のもとになされていたことである。

むしろ、公正取引委員会に原告のプリントネーム切断行為を報告した被告アンフィニー自身、被告商品に「フランス国(ルネ・ローラン)との技術提携により」との全く虚偽の事実を表示しており(甲六〇)、これは、国内で生産された商品に「外国の事業者名、デザイナー名等」を表示する商品の原産国に関する不当表示そのものである。

【被告アンフィニーの主張】

1 原告は、被告アンフィニーによる被告商品の販売が本件代理店基本契約一条に違反する旨主張するが、本件代理店基本契約は、売掛債権の確保を主眼とするものであって、被告アンフィニーが原告商品以外の同種商品を販売することを禁止するものではない。しかも、被告アンフィニーは、被告商品の販売開始後も、原告商品の販売を続ける(中国縫製の事実を明示して)意思を有していたし、現に継続していたのに、原告は、被告アンフィニーから売掛金の回収を終えるや、一方的に原告商品の供給を停止したのである。

また、本件代理店基本契約は、原告が被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止した時点又は遅くとも本件訴訟を提起した時点で解消されたというべきところ、既に消滅した契約に基づいて将来の行為を差し止めることはできないし、本件代理店基本契約には契約解消後も当事者を拘束するとの規定は何ら存しないのであるから、原告の請求は認容の余地がない。

2 原告商品を開発し、商品化したのはオペアであって原告ではない。したがって、仮に、被告商品が原告商品のデッドコピーであったとしても、被告アンフィニーは、原告に対して、何ら民事上の責任を負うものではない。

(一) すなわち、原告は、平成三年一二月一二日に設立された会社であるが、原告商品を着用したモデルの写真撮影が行われたのは同月三日であることが明らかであって(甲一〇の写真の撮影日)、このことは、原告の設立以前に原告商品が既に商品として完成していたことを裏付けている。既に商品として完成した商品について、その後、原告が商品化に携わるということはありえない。

現に、オペアの代表者貝原博人は、原告商品の企画・開発はオペアが行ったのであり、原告は原告商品の販売のための会社であって、企画・開発を行ったことはない旨を証明している(乙七一)し、原告代表者も、原告代理人に宛てた報告書(乙七三)の中で、「同商品の企画は株式会社オペアが平成三年に起こしたもので、デザイン企画、仕様書作成、型紙作成等に約五〇〇万円の原価が掛かっている。」「同商品は全て株式会社オペアで生産され、販売は株式会社アンジェラに独占権を供与されている。」「平成三年一二月一二日株式会社アンジェラが【マリアマリアン】補整下着の販売の為設立され、平成四年四月からの商品販売の為、代理店を全国に募集した。」と述べており、原告代表者自身が、訴訟を意識した上での代理人に対する報告の中で、原告商品の商品化に原告は携わっていないことを認めているのである。

(二) 原告は、設立中の会社としての原告が開業準備行為を行っていたことを根拠に、原告商品を開発したのは原告自身である旨主張するが、開業準備行為を行っていたことが直ちに商品開発をしたことになるわけではない。原告は、原告もいうように(前記一【原告の主張】1(一)(4)後段)、「オペアの補整下着販売部門を独立させる形で設立された会社」であり、その開業準備行為とは、原告商品の販売行為の準備をいうにすぎない。原告主張のようにパートの雇用や営業女性スタッフの募集広告、代理店募集広告をしていたことは、かえって原告が販売のために設立された会社であることを裏付けるものである。原告は、オペアは原告の実質的指示の下に指示どおり製造工程を担う下請であると主張するが、本末転倒の議論である。

原告商品を商品開発した者としての権利は、その開発と同時に、オペアに帰属したのであり、その後に原告会社が設立されたからといって自動的に原告に商品開発者としての権利が移転するわけではないし、商品開発者としての権利がオペアから原告に譲渡された事実もない。

(三) 商品の形態模倣行為につき不法行為が成立するためには、<1>原告自らが商品を製作した場合で、かつ製作物に創造性があること、<2>被告の側に、原告の商品と類似するが品質が劣る商品又は全く同一のデザインの商品を、廉価で販売し、そのことによって原告の商品の信用を害したというような悪質性が存在することが必要であるところ、本件の場合、右のとおり、原告自身が原告商品を開発したものではなく、かつ、既存の他社製品と比較して原告商品に創作性はなく(前記一【被告アンフィニーらの主張】1)、しかも、被告アンフィニーが被告商品を販売するに至った動機(後記4)からして、被告アンフィニーの行為に何ら違法性や悪質性はないから、被告アンフィニーの行為について不法行為が成立する余地はない。

3 民法四二三条の債権者代位権に基づく請求については、その訴訟の係属中に債務者が破産宣告を受けたときは、民事訴訟法一二五条、破産法八六条の類推により訴訟手続は中断すると解されるから、オペアが平成八年一二月一三日に破産宣告を受けている以上、原告はオペアの有する債権を代位行使する権限を有しない。

4 原告は、原告商品のうち中国製のものについても、平成四年から「(株)アンジェラ」「(株)アンフィニー」「サイズ」「ナイロン」等、日本製である旨を表示するタグを使用してきており、そのため購入者は当然日本製であると認識するという事情があるにもかかわらず、「中国製」とのタグ(プリントネーム)を切断して販売していた。原産国の表示は、景表法四条及び「『商品の原産国に関する不当な表示』の原産国の定義に関する運用細則」(乙四七)によって義務づけられ、また、不正競争防止法二条一項一〇号、一三条は、原産地を誤認させる行為に対して三年以下の懲役という重罰をもって臨んでいるのであって、右のような原告の行為は違法であることが明らかである。このことは、原告が公正取引委員会から警告を受け(乙四七)、始末書(甲五七)を徴求されていることからも明らかである。

被告アンフィニーは、原告商品が中国製であることについて噂によりその疑いを抱いていたが、その頃被告豊田は、原告の従業員でもあったため、被告アンフィニーの従業員に対して事実を告げることができなかったところ、平成五年七月、被告アンフィニー内において切断されていない「中国製」とのタグが発見され、また、宮崎のマルガリータの代理店で客が「中国製」とのタグの付いた原告商品を発見したことから、被告アンフィニーは、原告商品は中国製であるとの確信に至り、このまま原告商品の販売を続ければ原告の違法行為に加担することになるし、かといって原告やオペアに改善を求めても応じられないであろうと考えられたため、国内生産で、しかも従前から出ていたクレームを改良した被告商品を販売するに至ったのであるから、本件における原告の請求は、保護法益を欠如しているとして排斥されるべきである。

原告は、原告商品が中国製であることを被告アンフィニーが知った時期を問題にするが、仮に被告アンフィニーが以前から中国製であることを知っていたとしても、原告の行為の違法性と、かかる原告の違法な行為に加担することから離脱しようとする被告アンフィニーの行為の正当性には、何ら影響を及ぼすものではない。

三  争点3(被告鉄穴及び被告井上は、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売したことにつき、原告に対して不法行為責任を負うか)について

【原告の主張】

被告鉄穴及び被告井上は、平成六年五月一〇日以前は、被告アンフィニーから原告商品のみを仕入れてこれを販売していたが、同日以降、被告商品が原告商品の模倣品であることを知りながら、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売し、この結果、原告は従来の原告商品の販売経路を失ったから、被告鉄穴及び被告井上の行為は、不公正な手段を用いて原告の営業上の利益を侵害したものとして、被告アンフィニーとの共同不法行為を構成する。

【被告鉄穴及び被告井上の主張】

被告商品は原告商品の模倣品ではないが、仮にそうであるとしても、被告鉄穴及び被告井上は、被告商品の開発の経緯は全く知らず、原告商品の模倣品とは考えずに被告商品を仕入れて販売しているのであるから、不法行為は成立しない。また、被告鉄穴及び被告井上による従前の仕入販売は、被告アンフィニーを通じての原告商品のみに限定されていたわけではない。

四  争点4(被告農田及び被告梅津は、被告アンフィニーの行為について商法二六六条の三所定の責任を負うか。被告豊田は、雇用契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を負うか)について

【原告の主張】

1 被告豊田は、平成四年七月二三日から現在まで被告アンフィニーの代表取締役であり、被告梅津は、平成四年七月二三日から平成六年七月一四日まで被告アンフィニーの代表取締役であった。

代表取締役は、対外的には会社を代表し、対内的には業務全般の執行を担当する職務権限を有する機関であるから、善良な管理者の注意をもって会社のため忠実にその職務を執行し、会社の業務全般にわたって意を用いるべき義務を負うものである。しかるに、被告豊田及び被告梅津は共謀して、被告アンフィニーをして、平成六年五月一〇日より原告商品の模倣品たる被告商品を販売せしめ、よって原告に損害を与えたから、商法二六六条の三所定の損害賠償責任を負う。

2 また、被告豊田は、平成三年一〇月一五日、設立中の原告に採用され、平成五年一〇月三一日まで専務取締役としての処遇を受けながら、その在任中である平成五年七月頃から主導的に被告商品の製造準備行為を行い、平成六年五月一〇日、被告商品を販売するに至ったから、原告との雇用契約により負っている原告商品の誠実販売義務や原告に不利益となる行為をしない義務に違反したものであり、雇用契約上の債務不履行責任を負う。

【被告豊田の主張】

1 被告豊田が商法二六六条の三所定の損害賠償責任を負うとの主張は争う。なお、被告豊田が被告アンフィニーの代表取締役に就任したのは平成五年一二月二一日である。

2 被告豊田は、平成五年一〇月まで原告に社員として雇用されていたが(専務取締役ではない)、被告商品の開発が本格的になったので同月末に退職した。被告豊田は、もともと原告商品の売上げを伸ばすために原告によって被告アンフィニーに送り込まれた者であり、原告と被告アンフィニーに同時に在籍することは原告も承知の上のことである。そして、被告豊田は、現実に原告商品の売上げに貢献し、原告に十分な利益をもたらしたのであるから、債務不履行責任を問われるいわれはない。

【被告梅津の主張】

被告梅津が商法二六六条の三所定の損害賠償責任を負うとの主張は争う。

五  争点5(被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に、支払うべき損害金の額)について

【原告の主張】

被告らの行為によって原告が被った損害の額は、次の(一)ないし国の(五)合計額であるが、そのうち八〇〇〇万円の連帯支払いを求める。

(一) 侵害行為についての調査費用 合計一八二万二六四一円

(1) 商品形態鑑定料(甲六七の1・2) 一二三万六〇〇〇円

(2) 写真撮影料(甲六九の1~11、七〇の1~3、七一) 五八万一六四一円

(3) 登記簿謄本取寄手数料(甲七二の1・2) 五〇〇〇円

(二) 逸失利益ないし売上減少 一二〇〇万円

被告アンフィニーは、九州地区における総代理店として、原告商品を独占的に販売していたものであり、原告の被告アンフィニーに対する売上げは、全売上高の六〇%を占めていた。しかるに、被告アンフィニーが本件代理店基本契約に違反して被告商品の販売を開始したことにより、原告は被告アンフィニーに対して原告商品の供給を停止せざるをえず、従来被告アンフィニーを通じて有していた九州地区における販売経路を完全に喪失し、一方、被告アンフィニーは、この販売経路を利用して上代価格にして一〇億円程度の被告商品を販売した。したがって、被告アンフィニーが被告商品を販売していなければ、原告は、従前被告アンフィニーを通じて有していた販売経路により、被告商品と同量の原告商品を販売することができたことは因果関係上明白であるから、右売上げの減少が原告の被った損害であるということができる。原告商品の粗利益に対する純利益率は九・五%であるから、結局、原告は一二〇〇万円の純利益を得ることができず、同額の損害を被ったことになる。

(三) 信用損害を含む無形損害 一億円

原告は、次の(1)ないし(4)の事情に加えて、東京・福岡への調査出張や、身生地・レースメーカーなどへの調査依頼等のために多大の時間と労力を費やし、本来の業務たる原告商品の販売活動に専念できなかったことにより、多額の無形損害を被ったのであり、その額は一億円を下らない。

(1) 倒産の危機

原告は売上げの六〇%を失って資金繰りが苦しくなり、倒産の危機に瀕したので、これを回避するため、公的金融機関からの新規借入れや代表取締役を含む役員の個人資産の投入をせざるをえなくなった。

(2) 代理店の動向

原告は、前記二【原告の主張】1のとおり、身生地のオリジナリティをもって追随する商品は出ないとして原告商品の営業展開をしてきたところ、被告アンフィニーが発売後二年足らずでいとも簡単に原告商品のデッドコピーたる被告商品を製造、販売するようになったため、代理店の不信を買い、代理店契約の解約や仕入率の低減要求に応じざるをえなかった。

(3) 新規代理店の開拓の困難さ

被告アンフィニーは、九州地区における原告の総代理店として独占的に原告商品を販売していたため、原告は、ビジネスチャンスが多い優良市場である九州地区における販売活動を一切行っていなかった。このため、原告が被告アンフィニーを通じて有していた販売経路を喪失したことによる売上減少を同地区で補うについては、ゼロからスタートすることになり、かつ出遅れた開拓であるため、多くの困難がある。

(4) 飛躍的な売上増の時期における侵害行為

被告アンフィニーが被告商品の販売を開始したのは、原告商品の販売開始後二年経過した時期であり、原告商品の企画・開発に要した投下資本の回収がピークに達し、かつ、売上げが飛躍的に増大すると見込まれた時期であったため(現に、販売開始後一年足らずで五九%も売上げが増加した)、原告は、右(二)の逸失利益以上の損害を被っている。

(四) 懲罰的損害賠償 一〇〇〇万円

被告アンフィニーは、本件代理店基本契約違反ないし違法行為を隠蔽するため、次の(1)及び(2)のとおり事実、証拠の捏造や虚偽の供述を繰り返し、原告は、調査に時間と労力を費やさざるをえなかった。公正を旨とする裁判制度において、平然と証拠の捏造をし、虚偽の供述を繰り返す被告アンフィニーの企業体質、及び本件代理店基本契約によって総代理店の立場にある被告アンフィニーが原告商品のデッドコピーである被告商品を製造、販売した行為に対して、懲罰的意味合いをもつ損害額が加算されるべきである。

(1) 事実の捏造

被告アンフィニーは、被告商品を製造、販売するようになった動機につき、平成五年七月、被告アンフィニー内において切断されていない「中国製」とのタグが発見され、また、宮崎のマルガリータの代理店で客が「中国製」とのタグのついた原告商品を発見したことから、原告商品は中国製であるとの確信に至ったので、国内生産に切り替えるためであった旨主張し、これに沿う立証をしたが(被告豊田、証人重松克則、乙二九〔同人の陳述書〕)、宮崎のマルガリータの代理店で「中国製」とのタグのついた原告商品が発見されたのは平成六年二月のことであり(証人安部清明)、それ以前の平成五年八月二〇日には既に、訴外ダリ株式会社より訴外株式会社レナウン・エスパに対して被告商品の見本作成の依頼があった(乙六三)というのであるから、被告アンァィニーが被告商品を製造、販売するようになった動機は、中国で原告商品が縫製されている事実が発覚したことではないことが明らかである。被告アンフィニーは、原告に対して、平成五年七月から八月にかけて、強硬に原告商品の仕入率の低減を要求していたが、その要求が容れられなかったため、原告商品を仕入れて販売する場合の二倍以上の粗利益率を確保するべく、デッドコピーたる被告商品の製作に着手したのである。

(2) 証拠の捏造

証人安部清明の証言により、乙第一一、一三、一五、一七、一九、二一、三三、三七及び三八号証は捏造されたものであることが明らかになった。乙第二、第二六号証も捏造された証拠である。

(五) 弁護士費用 六〇〇万円

【被告アンフィニーらの主張】

原告は、逸失利益ないし売上減少による損害の額として一二〇〇万円を主張するが、原告商品の売上げの減少と被告アンフィニーらの行為との間に因果関係はない。売上げの減少は、原告が被告アンフィニーを倒産させようとして自ら原告商品の供給を停止したためであって、そのことによる損失を被告アンフィニーらが賠償しなければならないいわれはない。原告の被告アンフィニーに対する売上げが全売上高の六〇%を占めていたとの事実についても、何らの裏付けがない。

原告は、不正競争防止法二条一項三号、四条に基づく損害賠償請求は取り下げたのであるから、損害額の推定に関する同法五条の適用はなく、被告アンフィニーによる被告商品の販売量を原告商品の販売量に置き換えて算出しても、被告アンフィニーらの行為と因果関係のある損害を算出したことにはならない。

【被告梅津の主張】

損害額についての原告の主張は争う。

第四  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(被告商品は、原告商品の形態を模倣したものであるか)について

争点2ないし4についての判断の前提として、まず、被告商品が原告商品の形態を模倣したものであるか否かについて判断する。

1  証拠(甲一、三三、三六、三七の各1~7、四七、七六、乙三九、四四)及び弁論の全趣旨によれば、原告商品は、その色彩がシルバーグレーで、身生地に品番二四八八〇の綿混トリスキン(原告商品1・2・5・6)又はパワーネット(原告商品3・4・7)を使用している点で共通しており、個々的には原告商品1ないし7は、被告商品を除く他社製の補整下着と比較して、次のような形態上の特徴を有していることが認められる。

(一) 原告商品1(ボディスーツ)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ股下まで延びており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている、<3>後身頃の上辺部が直線状である。

(二) 原告商品2(ボディシェーパー)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>後身頃の上辺部が直線状である。

(三) 原告商品3(スリーインワン)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>裾レースが付けられていない。

(四) 原告商品4(ブラジャー)は、<1>カップを含む表面の全面にロータスペーズリー模様の幅広のレースが施されている、<2>アンダーテープが幅広である。

(五) 原告商品5(ロングガードル)は、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下複部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>裾の身生地部分にアイリスペーズリー模様の幅広のレースを施している、<3>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている。

(六) 原告商品6(ショートガードル)は、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下腹部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている。

(七) 原告商品7(ウエストニッパー)は、前面全体にV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端部分は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている。

2  被告アンフィニレらは、原告商品の形態は従来から販売されていた他社製品の形態と共通していて独自性はないとし、補整下着は、おしゃれのためにデザイン性や色調が重視される一般の婦人服やランジェリーとは異なり、体型を補整し維持するための下着であることから機能性が重視され、このため、補整下着の形態は、その機能から必然的に決定されるもので、どの製品も似かよったデザインになることはやむをえない性質のものであると主張し、弁理士高松和行の意見書(乙四四)に資料として添付されている写真や原告商品と他社製品(マルコ株式会社、スワニー株式会社、株式会社セシール、株式会社ベスタイル、プロフィット株式会社、株式会社ソヌール)との比較写真(乙三九)を援用する。

甲第四七号証(弁理士小谷悦司の鑑定書)及び右乙第四四号証によれば、ボディスーツはブラジャーとガードルの機能を兼ね備えたもので、バスト、ウエスト、ヒップ部分をトータルに補整するもの、ボディシェーパーは長身でボディスーツの着用が難しい人等において、背中と腹部の補整のためにガードルないしはウエストニッパーとともに用いられるもの、スリーインワンはブラジャー、ウエストニッパー、ガーターベルトの機能を併せ持ったもの、ブラジャーはバストの補整を目的とするもの、ロングガードルはウエスト、腹部、ヒップ、太ももの補整を目的とするもので、下腹部を引っ込め、ヒップをアップさせ二つの山をくっきりと出すことに加えて、大腿部に下垂した脂肪をヒップ部分に集結させるもの、ショートガードルはウエスト、腹部、ヒツプの補整を目的とするもので、下腹部を引っ込め、ヒップをアップさせ二つの山をくっきりと出すもの、ウエストニッパーは専ら腹部の補整を目的とするものであること、そして、右機能のために、商品の基本的な形状は必然的に決まるものであることが認められる。したがって、補整下着の場合、基本的な形状としては似かよったものにならざるをえないということができるものの、右に挙げた補整下着の機能からして必然的に決まるとはいえない部分も当然にあるのであり、補整下着メーカーは、基本的な形状としては似かよったものにならざるをえないという制約のもとで、補整下着の機能からして必然的に決まるとはいえない部分において、デザイン面での競争をし、他社製品との差別化を図っているということができるのである(被告アンフィニーら援用の乙第四四号証に資料として添付されている写真によっても、被告アンフィニーら主張のように補整下着の形態はその機能から必然的に決定されるとは認められない)。

甲第三六号証の1~7(原告商品・被告商品・他社製品の写真報告書)、前掲乙第三九号証及び弁論の全趣旨によれば、まず、補整下着の色調にはピンク、ブラウン等のあることが認められ、補整下着であることから直ちに色調がシルバーグレーに決まるものではないし、身生地が必然的に品番二四八八〇の綿混トリスキンやパワーネットに決まるものでないことも明らかである。

そして、個々の補整下着の形態についても、右各証拠により被告商品を除く他社製品と対比すれば、以下のとおり、前記1に原告商品1ないし7が有する形態上の特徴として摘示した点は、いずれも補整下着の機能から必然的に決まるデザインではないということができる。

(一) ボディスーツの場合、胸部から下腹部にかけてのデザインは、変形ひょうたん型のもの(甲三六の1のNO.4)、変形菱形のもの(同NO.5)があり、V型のものでも、左右二枚のレースを中心線でつなぎ合わせ、かつ、その先端は下腹部で止まっているものであり(甲三六の1のNO.3、乙三九のNO.2・3・5)、幅広の一枚レースを配し、かつ先端がほぼ股下まで延びているものは見当たらないこと、ヒップ部分の布地は、二枚はぎのもの(甲三六の1のNO.4)や、中心線にいせこまれていないもの(乙三九のNO.2・3・5)があること、後身頃の上辺部は、UないしV型にくびれているか(甲三六の1のNO.4・5)、下向きに円弧を描いている(乙三九のNO.2・5)ものがあることが認められ、原告商品1のように、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ股下まで延びており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていること、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれていること、<3>後身頃の上辺部が直線状であることは、いずれもボディスーツであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(二) ボディシェーパーの場合、胸部から腹部にかけてのデザインは、小さなV型にレースを配していて、続いて変形菱形となっているもの(甲三六の2のNO.5)があり、V型のものでも、左右二枚のレースを中心線でつなぎ合わせたものであり(同NO.3・4)、かつ、V型の先端が下腹部で止まっているもの(同NO.3)もあること、後身頃の上辺部は、UないしV型にくびれているもの(同NO.4・5)があることが認められ、原告商品2のように、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていること、<2>後身頃の上辺部が直線状であることは、いずれもボディシェーパーであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(三) スリーインワンの場合、胸部から腹部にかけて全体にレースを配し、その先端がV型になっているもの(甲三六の3のNO.3・5)があり、V型のものでも、左右二枚のレースを中心線でつなぎ合わせたものであり(甲三六の3のNO.4、乙三九のNO.5・6・7)、かつ、先端が裾レースに達しておらず(甲三六の3のNO.4、乙三九のNO.6・7)、裾レースが付けられている(甲三六の3のNO.4、乙三九のNO.5)ことが認められ、原告商品3のように、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていること、<2>裾レースが付けられていないことは、いずれもスリーインワンであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(四) ブラジャーの場合、カップ部分にのみレースが施され、かつ、アンダーテープの幅が狭いもの(甲三六の4のNO.3・5)があることが認められ、原告商品4のように、カップを含む表面の全面にロータスペーズリー模様の幅広のレースが施されていること、<2>アンダーテープが幅広であることは、いずれもブラジヤーであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(五) ロングガードルの場合、<1>前面上縁から股下に向けて配したレース部分は、その縁が緩やかな円弧を描いているもの(甲三六の5のNO.4・5、乙三九のNO.2)があり、V型のものでも、左右二枚のレースを中心線でつなぎ合わせたものであり(甲三六の5のNO.3、乙三九のNO.3・5)、裾の身生地部分に施されたレースはいずれも幅が狭く(同甲三六の5のNO.3・4・5、乙三九のNO.2・3・5)、ヒップ部分の布地は三枚はぎではない(同甲三六の5のNO.3・4・5)ことが認められ、原告商品5のように、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下腹部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていること、<2>裾の身生地部分にアイリスペーズリー模様の幅広のレースを施していること、<3>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれていることは、ロングガードルであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(六) ショートガードルの場合、フロントから股下に向けて配したレース部分は、その縁が緩やかな円弧を描いているもの(甲三六の6のNO.3・4)があり、V型といえるものでも、左右二枚のレースを中心線でつなぎ合わせたものであり、かつ、そのV型も極端に縦長であり(同NO.5)、ヒップ部分の布地は三枚はぎではない(同NO.3・4・5)ことが認められ、原告商品6のように、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下腹部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていること、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれていることは、ショートガードルであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

(七) ウエストニッパーの場合、前面に配したレース部分が矩形状のものもあり(甲三六の7のNO.5)、V型といえるものでも、その先端が裾に達していないか(同NO.4)、先端が幅広く裾と接しているものであり(同NO.3)、裾レースが付けられているものもある(同NO.5)ことが認められ、原告商品7のように、前面全体にV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端部分は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられていることは、ウエストニッパーであることから必然的に決まるデザインではないということができる。

以上のとおり、原告商品が共通してシルバーグレーで、身生地に品番二四八八〇の綿混トリスキン又はパワーネットを使用している点及び前記1に原告商品1ない七7が有する形態上の特徴として摘示した点は、いずれも補整下着の機能から必然的に決まるデザインではないということができ、原告商品の形態には独自性があるともいうことができる。被告アンフィニーらは、特にスワニー株式会社製の補整下着「メルフィーヌ25」の形態は原告商品とほとんど変わりがないとか、マルコ株式会社製の補整下着は原告商品の一雷の特徴とされる腹部のV型ゾーン等多くの点で共通していると主張するが、右スワニー株式会社製の「メルフィーヌ25」(乙三九のボディスーツNO.3、ロングガードルNO.3、乙六〇)及びマルコ株式会社製の補整下着(乙三九のボディスーツNO.2、ロングガードルNO.2、乙五七)を検討しても、右主張は採用することができず、右認定を左右しい。その他、以上の認定に反する被告アンフィニーらの主張はいずれも採用することができない。

3  一方、証拠(甲三三、三六、三七の各1~7、四七、七六、乙三九)及び弁論の全趣旨によれば、被告商品は、その色彩がシルバーグレーで、身生地に品番二四八八〇の綿混トリスキン(被告商品1・2・5・6)又はパワーネット(被告商品3・4・7)を使用している点で共通しており、個々的には被告商品1ないし7は、次のような形態を有していることが認められる。

(一) 被告商品1(ボディスーツ)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ股下まで延びており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている、<3>後身頃の上辺部が直線状である。

(二) 被告商品2(ボディシェーパー)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端はほぼ裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>後身頃の上辺部が直線状である。

(三) 被告商品3(スリーインワン)は、<1>胸部から下腹部にかけて大きくV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>裾レースが付けられていない。

(四) 被告商品4(ブラジャー)は、<1>カップを含む表面の全面にロータスペーズリー模様の幅広のレースが施されている、<2>アンダーテープが幅広である。.

(五) 被告商品5(ロングガードル)は、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下腹部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>裾の身生地部分にアイリスペーズリー模様の幅広のレースを施している、<3>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている。

(六) 被告商品6(ショートガードル)は、<1>前面上縁から股下に向けてV型にロレタスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端は下腹部に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている、<2>ヒップ部分の布地が三枚はぎで、中心線にいせこまれている。

(七) 被告商品7(ウエストニッパー)は、前面全体にV型にロータスペーズリー模様の幅広の一枚レースを配し、その先端部分は裾に達しており、縁取りとして細幅のレースが飾り付けられている。

4  そこで、被告商品の形態を原告商品の形態と対比すると、被告商品は共通して色彩がシルバーグレーで、身生地に品番二四八八〇の綿混トリスキン又はパワーネットを使用している点で原告商品と同じであり、個々的にも、被告商品1・2・3・4・5・6・7は、それぞれ原告商品1・2・3・4・5・6・7が有する前記1摘示の形態上の特徴をいずれも備えており、かつ、甲第三七号証の1~7、第四七号証によれば、その他の点も酷似していることが認められるから、被告商品1・2・3・4・5・6・7の形態は、それぞれ原告商品1・2・3・4・5・6・7の形態と実質的に同一というべきである。そして、被告アンフィニーは、原告の代理店として原告商品を取り扱っていて、自ら被告商品を製造、販売するに至ったのであるから、被告商品は、原告商品に依拠してこれと実質的に同一の形態の商品を製造したもの、すなわち原告商品の形態を模倣したものというべきである。

被告アンフィニーらは、被告商品は、原告商品について、縫製が粗く弱い、身につけるとカップの間が開く、スリーインワンの丈が長すぎる、生地の肌触りが悪いとのクレームに対処するため、被告アンフィニーが既存の原告商品や他社製品多数を研究し、改良・工夫を加えて開発したものであり、カップ部分が開かないようにするための裏当て、スリーインワンの丈の短縮、縫製の強化、裏生地、生地の色合い等多くの点で原告商品と異なる(乙三一)旨主張する。

しかしながら、被告商品が被告アンフィニーら主張の点で原告商品と異なるとしても、カップ部分が開かないようにするための裏当て、縫製の強化、裏生地の点は、直ちに被告商品の形態を原告商品の形態と異ならしめるとはいえないし、スリーインワンの丈の短縮の点は、甲第三六号証の3、第四七号証によれば、その短縮の程度がわずかであって、被告商品3と原告商品3の形態の前記実質的同一性に影響を及ぼすとは認められず、生地の色合いについては、甲第三六、第三七号証の各1~7、乙第三九号証その他本件全証拠によるも、実際上その色合いの違いを看取することは困難であるから、右主張は採用することができない。

二  争点2(被告アンフィニーが被告商品を販売したことは、本件代理店基本契約に違反し、又は不法行為を構成するか。原告は、被生アンフィニーに対して、本件代理店基本契約に基づき被告商品の販売の差止めを請求することができるか)について

1  証拠(甲二、三の1・2、四、五の1・2、一〇、一一、一三、一七の1~3、一八の1~3、一九、二一ないし二三の各1~4、二四の1~6、二七の1~7、二九、三三、四三の1・2、四四ないし四六、五一、五二、五五、五七ないし六〇、六二、六四、七六ないし七九、八一、八二の1~4、八三の1の1~5、八四ないし八六、八七・八八の各1~3、八九、九〇の1~3、九二、九三、九五ないし九八、乙六ないし一〇、二八の1・2、二九、三〇の1~3、三二、四五、四八、六三、証人勝又俊彦、同重松克則、同安部清明、原告代表者、被告豊田〔被告アンフィニー代表者〕、被告梅津)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(三)の事実が認められる。

(一) 原告は、下着メーカーであるオペアの補整下着販売部門を独立させる形で、オペアの専務取締役であった勝又俊彦(原告の取締役に就任)や山本勝三(原告の代表取締役に就任)が中心となって平成三年一二月一二日に設立した会社であるが、設立中の会社である原告は、同年一〇月一五日、原告の従業員として、オペアの卸先である株式会社ヒロ・コーポレーションの福岡支店の取締役営業部長であった被告豊田、同じく株式会社ヒロ・コーポレーションの取締役営業部長であった吉田敬二、補整下着メーカーのマルコ本社株式会社に勤務した経験のある西山聖子、株式会社ヒロ・コーポーレーションに勤務した経験のある大井美穂、そのほか西山眞由美を採用した。

被告豊田は、右のような経歴から勝又俊彦にスカウトされた形で、株式会社ヒロ・コーポレーションの従業員の身分のまま原告北入社したものであり、平成四年七月一日以降は平成五年一〇月三一日に退社するまで原告の専務取締役としての処遇を受けたが、被告梅津が平成元年六月一日に設までにはサンプルを完成させ、同年一二月三日、右三名のほか、被告豊田、被告梅津も立ち会って、モデルに着用させて写真撮影をした。

平成四年一月二八日、アスターメイトは、原告に対し、原告商品の製品規格を記載した規格書、製造の工程を記載した仕様書及び型紙を提出した。

原告は、オペアに対し原告商品の製造を委託した。その製造委託の形態は、オペアは、原告が提示した規格書等に基づき原告商品を製造し、原告の指定する納期に指定する数量を原告に納入し、原告商品は原告以外には納入しない、というものであった。

なお、原告が前記のとおり原告商品1・2・5・6の身生地に使用している品番二四八八〇の綿混トリスキンは、平成三年一〇月頃、マツモト・テキスタイルが、株式会社やぎ、オペア、原告と共同開発した生地であり、右四社の間で、マツモト・テキスタイルは、右品番の綿混トリスキンを原告以外の補整下着業界の同業他社には販売しない(「止め柄」とする)ことを合意した。

(四) 原告は、原告商品の発売に先立ち、平成四年三月二五日、九州地区における原告商品の販売活動のため、被告梅津が被告豊田とともに設立手続をしていた被告アンフィニーとの間で、本件代理店基本契約を締結した。但し、被告アンフィニーは、未だ設立登記を経由していなかったので、本件代理店基本契約の契約書(甲二)は、前記のとおり被告梅津が設立して取締役(被告豊田外一名が取締役に加わった同年一二月一八日以降は代表取締役)をしていたエム・オー・イーの名義で作成した。

右契約書(甲二)には、甲(原告)と乙(エム・オー・イー、実質的には被告アンフィニー)は、甲が製造、販売する「本製品」(「マリアマリアンブランド」女性用ファンデーション及びランジェリー)について次のとおり合意するとして、一条(基本契約)に、「甲は、乙に対し、将来継続して甲の本製品を売買するものとし、個別的な売買契約において特約なき場合においては本契約にもとずくものとする。乙は、甲の本製品に誠意をもって販売する事を約束し、著しく名誉、信用を失墜させる行為をしないことを誓約するものとする。」と記載されている。同じく二条は売買条件、三条は標準販売価格の厳守、四条は所有権の移転時期、五条は甲の瑕疵責任、六条は検品、返品等、七条は代金支払、八条は信販の利用と返金及び商品代金の相殺、九条は乙の債務の不履行があった場合の遅延損害金、一〇条は契約の解除、一一条は契約の有効期間、一二条は本件代理店基本契約が解除・解約された場合の返品の不可、一三条は協議事項、一四条は管轄裁判所・一五条は公正証書作成、一六条は連帯保証人、一七条は商品の発注、一八条は商品の納入、一九条は代金の支払い、二〇条は運賃の支払い、二二条は秘密保持に関する各条項であって(二一条は抹消)、右一〇条(契約の解除)には、「乙において、次号の一つに該当する場合、甲は乙に対し、催告の手続きを要せず直ちに個別的契約ないし本契約を解除出来る。また、この場合、乙は債務全額及び損害がある場合その損害額全額を即時甲に支払わなければならない。……<5>本契約の条項、及び個別的契約につき悪意又は重大な違反があったとき。……<7>著しく名誉、信用を失墜させる行為をした場合。」と記載されている。そして、原告が被告アンフィニーに原告商品を含む「本製品」を卸販売する価格は、被告アンフィニーが原告の九州地区総代理店であることと月刊売上目標五〇〇〇万円を約束したことから、通常の代理店卸価格が上代価格の三〇ないし四〇%であるのに対し、上代価格の二五%と合意された。

(五) 原告は、予定どおり平成四年四月一日から原告商品の販売を始めた。

その販売方式は、原告と代理店契約をした代理店又はその下部組織であるサロンに、スターターキットと称する原告商品のサンプルを備え置き、顧客が試着の上、代理店又はサロンに商品を注文し、代理店又はサロンから原告に注文するというものであり、原告は、代理店又はサロン向けに「Maria Marian マニュアル」(甲七七)、「Maria Marian 販売マニュアル」(甲七八)と題する販売用マニュアルを作成し、配布していた。また、前記のとおり、品番二四八八〇の綿混トリスキンは原告以外の補整下着業界の同業他社には販売しないとの合意があったことから、原告は、代理店に対して、原告商品以外に綿混トリスキンを身生地に使用したものはないので、追随する商品は出てこないと述べていた。

原告商品の販売(上代)価格は、原告商品1(ボディスーツ)三万三〇〇〇円、原告商品2(ボディシェーパー)三万円、原告商品3(スリーインワン)三万八〇〇〇円、原告商品4(ブラジャー)一万八〇〇〇円、原告商品5(ロングガードル)二万円、原告商品6(ショートガードル)一万六〇〇〇円、原告商品7(ウエストニッパー)一万五〇〇〇円である。

原告は、前記のとおりオペアに原告商品の製造委託をしていたが、そのうち約六割を占めるオペアの中国大連工場で縫製された原告商品については、代理店に納入する前に、原告商品に縫い付けられていた「Maria Marian」の商標、日本語でサイズ・生地・洗濯方法・原告名((株)アンジェラ)を記載したタグはそのままにして、同じく原告商品に縫い付けられていた「中国製」とのタグを切り取っていた。

なお、右平成四年四月一日、原告の現代表者の田中秀二が統括部長の肩書で入社し、同年六月三〇日原告の代表取締役に就任した。

(六) 被告アンフィニーは、平成四年七月二一日設立登記を経由し、被告梅津が代表取締役に、被告豊田外一名が取締役に就任して、名実ともに本件代理店基本契約の一方当事者となった。そして、平成五年一二月二一日には、被告豊田も、被告アンフィニーの代表取締役に就任した。平成五年六月には重松克則が企画開発課長として被告アンフィニーに入社し(平成七年三月三一日取締役に就任、平成九年一月二三日辞任)、そのほか、被告アンフィニーには四名程度の従業員がいた。

原告は、被告アンフィニーに納入する原告商品についても、中国大連工場縫製のものについては前記(五)のように「中国製」とのタグを切り取っていたほか、国内縫製のものも含め、被告アンフィニーが原告の二次問屋であることを下位の代理店に明らかにしたくないとの被告アンフィニーの要請により、原告名((株)アンジェラ)入りのタグを、被告アンフィニー名(INFINI、(株)アンフィニー)入りのタグに付け替えて納入していたが、平成四年一〇月以降は、全原告商品について、事業者名を入れないタグに切り替えた。

(七) 原告と被告アンフィニーが原告商品の取引を始めて一年余を経過した平成五年七月になって、両者の間で、与信枠、担保等の取引条件の見直しや原告の専務取締役待遇で被告アンフィニーの取締役でもある被告豊田の地位の問題等を巡って交渉が行われ、被告アンフィニーは、原告商品の仕入価格(卸価格)を上代価格の二五%から一八%に下げるよう要請するなどし、その結果、同年八月、原告と被告アンフィニーは、同年四月一日以降の仕入分につき、毎月四五〇〇万円分までは二五%、四五〇〇万円を超える分は一八%とし、原告は被告アンフィニーに対し原告商品の九州地区における独占的販売権を与え、与信枠は上代価格で一億五〇〇〇万円とし、被告アンフィニーは原告を受取人とする五〇〇〇万円の生命保険に加入することなどで合意した。

原告から被告アンフィニーに対する販売高(上代ベース)は、月によって若干の上下の変動はあるが、大体のところ、平成四年四月の約四〇万円に始まり、同年六月二〇〇〇万円台に達し、同年九月から四〇〇〇万円台、平成五年六月から六〇〇〇万円台になり、以後概ね六〇〇〇万円台で推移し、平成六年三月には約八七六五万円に達している。

一方、被告アンフィニーは、これまで原告商品のみを販売していたが、被告豊田及び被告梅津らは、右合意をした平成五年八月頃から、新製品(被告商品)開発の作業に入り、株式会社レナウン・エスパに新製品の縫製を委託し、販売元として株式会社ダリ、株式会社ベスタイルを通して被告アンフィニーが購入するというルートを開拓した。被告商品1・2・5・6の身生地については、被告アンフィニーは、原告商品と同じ品番二四八八〇の綿混トリスキンを使用することとし、同年八月頃、伊藤忠商事株式会社を通じてマツモト・テキスタイルに右品番二四八八〇の綿混トリスキンの仕入れを申し入れ、このときは断られたものの(補整下着業界用ではないことが確認できないため)、同年一〇月、旭織物株式会社を通じて、再び右品番二四八八〇の綿混トリスキンの仕入れを申し入れ、補整下着業界ではなく店舗販売(デパート、トスーパー等)用であるということを確約した上で、右綿混トリスキンを生機の状態で入手した。

こうして被告アンフィニーの被告豊田及び被告梅津らは、被告商品を完成し、まず、平成六年三月三一日、セールス用の被告商品1・2・3・4・6合計二〇枚が株式会社レナウン・エスパの西脇工場から被告アンフィニーに直送され、同様に、同年四月一日、セールス用の被告商品5・7合計八枚及びモデル用の被告商品1ないし7一組が、同月二八日、一般販売用の被告商品3五七五枚、被告商品5一九九枚、被告商品6一五〇枚、被告商品7一七五枚の合計一〇九九枚が株式会社レナウン・エスパ西脇工場から被告アンフィニーに直送された。被告梅津は、同年四月頃、自らも原告商品の新商品であるとして被告商品を二軒の代理店に見せに回った。また、同年四月二〇日には、被告商品に付する商品札が被告アンフィニーに納品された。

なお、この間の同年一、二月頃、被告アンフィニーの代理店であるマルガリータの鹿児島の代理店マイレターにおいて、中国大連工場縫製の原告商品で「中国製」とのタグが切り取られていないものが発見された。

(八) こうして、被告アンフィニーの被告豊田及び被告梅津らは、株式会社レナウン・エスパに委託して、初回分として、被告商品1三〇七五枚、被告商品2三三二五枚、被告商品3一五〇〇枚、被告商品4五五七五枚、被告商品5五四〇〇枚、被告商品6一二七五枚、被告商品7三四二五枚を製造し(甲五二〔被告梅津作成の在庫表〕)、これを販売した。

被告商品の販売(上代)価格は、被告商品1(ボディスーツ)三万六〇〇〇円、被告商品2(ボディシェーパー)三万三〇〇〇円、被告商品3 (スリーインワン)三万八〇〇〇円、被告商品4(ブラジャー)二万円、被告商品5(ロングガードル)二万三〇〇〇円、被告商品6(ショートガードル)一万八〇〇〇円、被告商品7(ウエストニッパー)一万七〇〇〇円であり、被告商品3(スリーインワン)を除き、対応する原告商品より二〇〇〇円又は三〇〇〇円高い。

被告商品の販売方式も、原告商品と同様、被告アンフィニーの代理店又はその下部組織であるサロンに、スターターキットと称する被告商品のサンプルを備え置き、顧客が試着の上、代理店又はサロンに商品を注文し、代理店又はサロンから被告アンフィニーに注文するというものである。また、被告アンフィニーは、原告と同様に代理店又はサロン向けに、販売用マニュアル(甲七九)を作成して配布していたが、右被告アンプイニーの販売用マニュアル(甲七九)は、「Maria Marian」の部分を「LUNELOURAN PARIS」に変えたほか、極く一部に記載内容の異なる部分や頁の順序の違いはあるものの、大部分の記載が原告の「Maria Marian マニュアル」(甲七七)と一致し、実質的に同一であり、「信販利用による返金口座申請書」以下の各書式を掲載した末尾七頁分が、原告の「Maria Marian 販売マニュアル」(甲七八)の対応する部分と実質的に同一である(全体として、原告の右マニュアル〔甲七七〕の大部分と販売マニュアル〔甲七八〕立して取締役をしていた福岡市所在のエム・オー・イー(平成四年一二月一八日にはその取締役になった)の事務所にいて、原告商品の販売活動に従事した。

(二) 原告は、平成三年一一月七日、オペアの関連会社でデザイン企画を業とするアスターメイトの名義で、現在の原告の本店事務所である心斎橋井上ビルの一室を井上ビル株式会社から一か月六〇万円の家賃で賃借し、同月一一日、保証金七五〇万円と同月分の日割家賃の合計八〇八万六五〇〇円を同社に支払い(その領収証の宛名は、原告の名称が決まった時点で書き入れることとして、空欄のままにされた)、同月一二日には、日本電信電話株式会社との間で加入電話契約を締結した。

また、原告は、同月一三日、原告(株式会社アンジェラ)の名義で、株式会社モリカワに対し、求人誌「とらば-ゆ」の同年一二月六日から一二日までの一週間の号に原告の求人広告を掲載すること、及び平成四年一月二八日付日経流通新聞に原告の代理店募集の広告を掲載することを申し込み、各広告は、当該期日にそのとおり掲載された。

原告は、平成三年一二月一二日設立登記を経由し、株式会社モリカワから、同月三一日、右求人広告の代金三七万四九二〇円の請求を受け、また、平成四年一月二八日、右代理店募集広告の代金一〇一万九七〇〇円の請求を受け、それぞれ後日支払った。

(三) 設立中の原告に従業員として採用された前記吉田敬二、西山聖子、西山眞由美らは、平成四年四月一日の発売を目指して、アスターメイトの担当者とともに、新商品(原告商品)の開発の作業をし、平成三年一一月末日の抜粋をそのまま合成したものということができる)。

なお、被告アンフィニーは、被告商品の製造についてフランスの「ルネ・ローラン」社と技術提携した事実はないにもかかわらず、表に「LUNELOURAN PARIS」、裏に「この製品はフランス国(ルネ・ローラン)との技術提携により日本で製作されたものです。」と記載した下げ札を被告商品に付している。

こうして被告アンフィニーは被告商品の販売を始めたため、被告アンフィニーによる原告商品の販売高は、平成六年三月に被告アンフィニーの仕入価格で消費税込み約一九九一万円(上代ベースで約八七六五万円)に達した後、同年四月約一三一二万円、五月約一〇五八万円、六月約七九二万円というように大きく落ち込んだ。

(九) 被告アンフィニーにおいては、被告梅津と被告豊田の仲がしだいにうまく行かなくなり、両名の不仲と被告アンフィニーによる原告商品の販売高の落込みを憂慮した原告の代表取締役田中秀二と取締役勝又俊彦は、平成六年六月一六日、福岡で被告梅津と会って話を聞いたところ、かねて税理士試験を受けるための勉強をしていた被告梅津は、被告商品は原告商品の模倣商品であり、同年五月一日施行の改正不正競争防止法二条一項三号に違反するので心配で夜も寝られないから、六月末で被告アンフィニーをやめると話した。右田中秀二と勝又俊彦は、このとき初めて、被告アンフィニーが被告商品を製造、販売していること及び右改正不正競争防止法二条一項三号の規定の内容を知った。翌一七日、被告梅津は、企業法務一九九四年(平成六年)六月号に掲載された辻本一義弁理士の「不正競争防止法が改正されました」と題する右条文に触れた論文のコピーを被告アンフィニーから原告にファックスで送信した。また、被告梅津は、同月二五日、大阪のオペアの事務所を訪れ、勝又俊彦に被告商品一組と株式会社ベスタイルに関する帝国データバンクの資料を渡した。更に、被告梅津は、原告の要請にょり、同年七月五日、自己の記憶に基づき被告商品の販売を開始したのは同年五月一〇日以降である旨を記載した書面を原告に送付した。

同年七月一四日、被告梅津は、被告アンフィニーの代表取締役及び取締役を辞任した。

(一〇) 原告は、被告アンフィニーが被告商品を製造、販売している事実を知って、平成六年六月末日をもって被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止するとともに、被告アンフィニーに対し、同年七月七日到達の内容証明郵便により、被告商品の販売の即時中止、廃棄等及び損害賠償一億三四九〇万円の支払いを求める警告書を送付した。

(一一) 被告アンフィニーは、平成六年八月四日、原告による原告商品の前記「中国製」とのタグの切取り行為について公正取引委員会近畿事務局に報告した。

原告は、平成六年九月以降は、中国大連工場縫製の原告商品について、相変わらず「中国製」とのタグは切り取っているものの、原告商品を入れた包装の中に、表に「Maria Marian」との商標、裏に「ご愛用者の皆様に 株式会社アンジェラ 本製品の資材は全て日本製です。規格、デザイン等全て日本で起こして管理し、縫製のみ中国大連の専属工場で行い、日本で入念な品質検査を致しておりますので安心してご利用ください。(中国製)」と印刷した下げ札を入れて納入するようになり、同年九月七日付書面により、代理店に対し、中国大連工場縫製の原告商品には右下げ札を付して納入する旨を通知した。

平成八年四月九日、原告は、平成四年四月から平成六年九月までの間、前記「中国製」とのタグを切り取って販売していた行為について、公正取引委員会事務局近畿事務局取引課長から、一般消費者が原産国を誤認するおそれがあり、景表法四条三号に抵触するとして口頭注意を受け、同課長宛の平成八年五月一〇日付始末書により、右口頭注意を受けたことを確認し、平成六年九月以降は前記下げ札を付している旨を報告した。

(一二) なお、オペアは、平成八年一一月二一日、大阪地方裁判所に対し破産宣告を申し立て、同年一二月一三日、破産宣告を受けた。

2  右1認定の事実及び前記一の認定判断を前提に、被告アンフィニーは、平成六年五月一〇日以降現在に至るまで、原告商品のデッドコピーたる被告商品を被告鉄穴、被告井上外に販売して流通市場におき、原告の名誉、信用を著しく失墜させているから、本件代理店基本契約一条に違反しており、原告は、被告アンフィニーに対し、債務不履行による損害賠償を請求できるとともに、右条項に基づき被告商品の販売の差止めを請求することができる、との原告の主張について判断する。

(一) 本件代理店基本契約の契約書一条(基本契約)には、前記1(四)認定のとおり、「甲は、乙に対し、将来継続して甲の本製品を売買するものとし、個別的な売買契約において特約なき場合においては本契約にもとずくものとする。乙は、甲の本製品に誠意をもって販売する事を約束し、著しく名誉、信用を失墜させる行為をしないことを誓約するものとする。」と記載され、これを受けて、一〇条には、無催告で本件代理店基本契約及び個別的契約を解除できる場合の一つとして、乙(被告アンフィニー)が「著しく名誉、信用を失墜させる行為をした場合」が挙げられているから、被告アンフィニーは、本件代理店基本契約により、誠意をもって原告商品を販売すべき義務、著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為をしない義務を負っているというべきである(もっとも、本件代理店基本契約は継続的契約関係を定めるものであり、しかも、被告アンフィニーは原告の九州地区総代理店であり、原告商品の九州地区における独占的販売権を与えられていたのであるから、誠意をもって原告商品を販売する義務、著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為をしない義務を負うことは当然のことであり、本件代理店基本契約一条は、このことを明文で確認したにすぎないともいうことができる)。

(二)しかして、前記1認定の事実によれば、被告アンフィニーは、原告との間で本件代理店基本契約を締結して原告の九州地区総代理店として原告商品(ブランド名「マリアマリアン」)の取引を始めて一年余を経過した平成五年七月になって、与信枠、担保等の取引条件の見直しや原告の専務取締役待遇で被告アンフィニーの取締役でもある被告豊田の地位の問題等を巡って原告と交渉した結果、同年八月、原告商品の仕入価格(卸価格)を毎月四五〇〇万円分までは上代価格の二五%、四五〇〇万円を超える分は一八%とし、原告商品の九州地区における独占的販売権を付与されることなどで合意する一方、その頃から、新製品(被告商品)開発の作業に入り、株式会社レナウン・エスパに新製品の製造を委託し、販売元として株式会社ダリ、株式会社ベスタイルを通して被告アンフィニーが購入するというルートを開拓し、同年一〇月には、旭織物株式会社を通じて、原告がマツモト・テキスタイル等との間で原告以外の補整下着業界の同業他社には販売しないことを合意していた品番二四八八〇の綿混トリスキンを生機の状態で入手し、被告商品(ブランド名「ルネローラン」)を完成し、平成六年三月三一日以降、株式会社レナウン・エスパ西脇工場からセールス用及びモデル用の被告商品の直送を受けたのに続いて、同年四月二八日には、同様に株式会社レナウン・エスパ西脇工場から一般販売用の被告商品3・5・6・7の合計一〇九九枚の直送を受けて、その後一般消費者に販売するに至り、こうして被告アンフィニーが株式会社レナウン・エスパに委託して製造し、販売した被告商品は、初回分が被告商品1三〇七五枚、被告商品2三三二五枚、被告商品3一五〇〇枚、被告商品4五五七五枚、被告商品5五四〇〇枚、被告商品6一二七五枚、被告商品7三四二五枚であり、そのため、被告アンフィニーによる原告商品の販売高は、被告アンフィニーの仕入価格で平成六年三月に約一九九一万円に達した後、同年四月約一三一二万円、五月約一〇五八万円、六月約七九二万円というように大きく落ち込み、被告商品の販売(上代)価格は、被告商品3を除き、対応する原告商品より二〇〇〇円又は三〇〇〇円高い、というのであり、そして、被告商品は、原告商品に依拠してこれと実質的に同一の形態の商品を製造したもの、すなわち原告商品の形態を模倣したものであることは前記一認定判断のとおりである。

したがって、被告アンフィニーの代理店や消費者にとっては、被告商品と原告商品の区別がつかないため、原告が全く同一の商品を、ブランド名だけ「マリアマリアン」(原告商品)から「ルネローラン」(被告商品)に変えて新製品であるかのように装って、しかも「マリアマリアン」より高い値段で販売しているとの誤解を生じさせるものであり、仮に被告商品の形態が原告商品の形態と一部異なる点のあることを認識する代理店や消費者があったとしても、旧商品(原告商品)にわずかに変更を加えただけの新製品(被告商品)に別のブランド名(ルネローラン)を付けることによって実質的に値上げをしているとの誤解を生じさせるものというべきであり、かかる被告アンフィニーの行為は、原告の名誉、信用を著しく失墜させることは明らかであるから、被告アンフィニーは、本件代理店基本契約一条に基づき原告に対して負っている、誠意をもって原告商品を販売すべき義務、著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為をしない義務に違反したというべきである。

そうすると、原告は、被告アンフィニーに対し、本件代理店基本契約一条に基づく債務の不履行による損害賠償を請求することができるとともに、同条項に基づき、被告商品の販売の差止めを請求することができることになる。

(三) 被告アンフィニーらは、本件代理店基本契約は、売掛債権の確保を主眼とするものであって、被告アンフィニーが原告商品以外の同種商品を販売することを禁止するものではなく、しかも、被告アンフィニーは、被告商品の販売開始後も、原告商品の販売を続ける(中国縫製の事実を明示して)意思を有していたし、現に継続していたのに、原告は、被告アンフィニーから売掛金の回収を終えるや、一方的に原告商品の供給を停止したのである旨主張する。

確かに、前記1(四)認定の事実によれば、本件代理店基本契約の条項のうち、二条は売買条件、三条は標準販売価格の厳守、七条は代金支払、八条は信販の利用と返金及び商品代金の相殺、九条は乙の債務の不履行があった場合の遅延損害金、一〇条は契約の解除、一二条は本件代理店基本契約が解除・解約された場合の返品の不可、一五条は公正証書作成、一六条は連帯保証人、一九条は代金の支払いに関する各条項であり、売掛債権の確保にかかわる条項であり、また、本件全証拠によるも、本件代理店基本契約に被告アンフィニーが原告商品以外の同種商品を販売することを禁止する条項が存するとは認められない。しかしながら、本件代理店基本契約は、右のような売掛債権の確保にかかわる条項だけでなく、前示のとおり、まず、条項の最初である一条において、「基本契約」と題して、被告アンフィニーが誠意をもって原告商品を販売すべき義務、著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為をしない義務を定め、一〇条において原告が無催告で本件代理店基本契約を解除できる場合の一つとして被告アンフィニーが「著しく名誉、信用を失墜させる行為をした場合」を挙げているというように、継続的契約関係における信頼関係を維持するための条項を設けているのであり、これも、本件代理店基本契約における重要な条項であるというべきであり、そして、前記認定判断によれば、被告アンフィニーは、原告の九州地区総代理店であり、原告商品の九州地区における独占的販売権を与えられていたにもかかわらず、単に原告商品の同種商品であるというのではなく、原告商品の形態の模倣商品である被告商品を販売した(そのため、被告アンフィニーによる原告商品の販売高は大きく落ち込んだ)のであるから、これが原告の名誉、信用を著しく失墜させる行為であることは前示のとおりであり、原告が平成六年六月末日をもって被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止したことも、右のように被告アンフィニーが原告との信頼関係を破壊する行為をした以上、当然ともいうべき措置である。

また、被告アンフィニーらは、本件代理店基本契約は、原告が被告アンフイニーに対する原告商品の供給を停止した時点又は遅くとも本件訴訟を提起した時点で解消されたというべきところ、既に消滅した契約に基づいて将来の行為を差し止めることはできないし、本件代理店基本契約には契約解消後も当事者を拘束するとの規定は何ら存しないのであるから、原告の請求は認容の余地がない旨主張する。

本件代理店基本契約は、原告が平成六年六月末日をもって被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止し、被告アンフィニーに対し、同年七月七日到達の内容証明郵便により、被告商品の販売の即時中止、廃棄等及び損害賠償一億三四九〇万円の支払いを求める警告書を送付したことにより、原告は、被告アンフィニーの債務不履行により本件代理店基本契約一〇条に基づき契約解除の意思表示を黙示的にしたものと解するのが相当であり、これによって、本件代理店基本契約は解除されたというべきである。しかしながら、右解除によって、被告アンフィニーが誠意をもって原告商品を販売すべき義務が消滅することは当然であるとしても、本件代理店基本契約の存続中は一条に基づき被告アンフィニーは原告の名誉、信用を著しく失墜させる行為をしない義務を負っていたのに、しかも、原告の九州地区総代理店であり、原告商品の九州地区における独占的販売権を与えられていたのに、原告商品の形態の模倣商品たる被告商品を販売したという債務不履行によって本件代理店基本契約を解除された後は原告の名誉、信用を著しく失墜させる行為をすることが許容されると解することは到底できないから、明文の規定はなくとも、被告アンフィニーは、本件代理店基本契約の解釈として、少なくとも被告アンフィニーの債務不履行による契約解除の場合には、契約解消後も、同契約一条の原告の名誉、信用を著しく失墜させる行為をしない義務を負っているというべきであり、そして、被告アンフィニーが被告商品を販売することが著しく原告の名誉、信用を失墜させる行為に該当することは前示のとおりである。

したがって、右被告アンフィニーらの主張は、いずれも採用することができない。

(四) 被告アンフィニーらは、原告商品を開発したのはオペアであって原告ではないから、仮に被告商品が原告商品のデッドコピーであったとしても、被告アンフィニーは、原告に対して何ら民事上の責任を負うものではない旨主張する。

しかしながら、原告の主位的請求は、原告と被告アンフィニーとの間の本件代理店基本契約に基づく損害賠償及び差止めの請求であるから、原告商品を開発したのが原告であるかどうかは要件ではない。のみならず、オペアが原告商品を開発したとの事実を認めるに足りる証拠はなく、前記1認定の事実によれば、原告商品は、設立中の原告に採用された、いずれも補整下着業界に勤務した経験のある吉田敬二、西山聖子らが、オペアの関連会社でデザイン企画を業とするアスターメイトの担当者とともに開発したものであり、原告商品の製造も、原告がオペアに製造を委託し、オペアは原告が提示した規格書等に基づき原告商品を製造し、原告の指定する納期に指定する数量を原告に納入し、原告商品は原告以外には納入しないという形態によるものであり、もともとはオペアの補整下着販売部門を独立させる形で原告が設立されたものではあるものの、原告商品の製造についてはオペアが逆に原告の下請け的立場にあったのであるから、いずれにしても、被告アンフィニーは原告に対して何ら民事上の責任を負うものではないとする被告アンフィニーらの主張は、到底採用の限りでない。

被告アンフィニーらは、原告の設立登記(平成三年一二月一二日)の前の同月三日に原告商品のサンプルをモデルに着用させて写真撮影をしたことにつき、原告の設立以前に原告商品が既に完成していたことを裏付けており、既に商品として完成した商品について、その後原告が商品化に携わるということはありえない旨主張するが、設立登記の前に設立中の会社として活動することがありうることはいうまでもなく、現に、設立中の原告に採用された従業員が、原告の設立登記前からアスターメイトの担当者とともに原告商品の開発に当たっていたことは右のとおりである。被告アンフィニーらは、右認定に反する証拠として乙第七一、第七三号証を援用するが、甲第九六、第九八号証に照らし、採用することができない。

(五) 更に、被告アンフィニーらは、原告が、前記1(五)認定のとおり、約六割を占めるオペアの中国大連工場で縫製された原告商品について、代理店に納入する前に、原告商品に縫い付けられていた「Maria Marian」の商標、日本語でサイズ・生地・洗濯方法・原告名((株)アンジェラ)を記載したタグはそのままにして、同じく原告商品に縫い付けられていた「中国製」とのタグを切り取っていた行為につき、景表法四条、不正競争防止法二条一項一〇号、一三条に該当する違法な行為であり、被告アンフィニーは、原告商品が中国製であることについて噂によりその疑いを抱いていたが、その頃被告豊田は原告の従業員でもあったため、被告アンフィニーの従業員に対して事実を告げることができなかったところ、平成五年七月、被告アンフィニー内において切断されていない「中国製」とのタグが発見され、また、宮崎のマルガリータの代理店で客が「中国製」とのタグの付いた原告商品を発見したことから、被告アンフィニーは、原告商品は中国製であるとの確信に至り、このまま原告商品の販売を続ければ原告の違法行為に加担することになるし、かといって原告やオペアに改善を求めても応じられないであろうと考えられたため、国内生産で、しかも従前から出ていたクレームを改良した被告商品を販売するに至ったのであるから、本件における原告の請求は、保護法益を欠如しているとして排斥されるべきである旨主張する。

確かに、右のように中国縫製の原告商品について、日本語で記載された他のタグをそのままにして、「中国製」とのタグのみを切り取れば、代理店や消費者に日本国内で縫製された製品であるとの誤認を生じさせるから、不当な行為といわざるをえない。しかしながら、平成五年七月に被告アンフィニー内においで切断されていない「中国製」とのタグが発見されたという点については、乙第二九号証(重松克則の陳述書)、第四八号証(被告豊田の陳述書)、証人重松克則の証言及び被告豊田の供述中に、これに沿う記載部分ないし供述があるが、右発見により、このまま原告商品の販売を続ければ原告の違法行為に加担することになると考えた旨主張するものの、もしそうであれば、被告アンフィニーによる原告商品の販売活動にいささかでも躊躇が生じて販売高が減少してもよさそうなものであるが、前記1(七)認定の事実によれば、被告アンフィニーによる原告商品の仕入高(上代ベース)は、平成四年四月の約四〇万円に始まり、同年六月二〇〇〇万円台に達し、同年九月から四〇〇〇万円台、平成五年六月から六〇〇〇万円台になり、以後概ね六〇〇〇万円台で推移し、平成六年三月には約八七六五万円に達している、というのであって、平成五年七月以降も、原告商品の販売高は減少せず、むしろそれ以前より高水準にあること、その平成五年七月に被告アンフィニー内において発見されたという「中国製」とのタグのついた原告商品そのものが証拠として提出されていないなど、これを裏付けるに足りる証拠がないことに徴し、右記載部分ないし供述部分は採用することができない。もっとも、平成六年一、二月頃に被告アンフィニーの代理店であるマルガリータの鹿児島の代理店マイレターにおいて、中国大連工場縫製の原告商品で「中国製」とのタグが切り取られていないものが発見されたことは、前記1(七)認定のとおりであるが、被告アンフィニーの被告豊田及び被告梅津らは、既に平成五年八月頃から新製品(被告商品)開発の作業に入り、縫製から販売に至るルートを開拓し、被告商品1・2・5・6の身生地に品番二四四八〇の綿混トリスキンを使用することとし、同年一〇月には右綿混トリスキンを入手したというのであるから、右マイレターにおいて中国大連工場縫製の原告商品で「中国製」とのタグが切り取られていないものが発見されたが故に被告豊田及び被告梅津らが新製品(被告商品)の開発を決意したという関係にあるとは認められない。のみならず、右原告による「中国製」とのタグの切取り行為は、積極的に虚偽の表示をしたというわけではないだけでなく(これに反し、被告アンフィニーが前記1(八)認定の下げ札を被告商品に付している行為は、積極的に虚偽の表示をしているといえる)、原告が原告商品につき右のような縫製国につき誤認を生じさせる行為をしたからといって、被告が原告商品の形態を模倣した被告商品を製造、販売する行為が正当化されるとする根拠は全くなく、本件における原告の請求は、保護法益を欠如しているとして排斥されるべきであるとする被告アンフィニーらの主張は、独自の見解として採用の余地はない。

三  争点3(被告鉄穴及び被告井上は、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売したことにつき、原告に対して不法行為責任を負うか)について

原告は、被告鉄穴及び被告井上は平成六年五月一〇日以前は、被告アンフィニーから原告商品のみを仕入れてこれを販売していたが、同日以降、被告商品が原告商品の模倣品であることを知りながら、被告アンフィニーから被告商品を仕入れて販売し、この結果、原告は従来の原告商品の販売経路を失ったから、被告鉄穴及び被告井上の行為は、不公正な手段を用いて原告の営業上の利益を侵害したものとして被告アンフィニーとの共同不法行為を構成すると主張するが、被告鉄穴及び被告井上が原告商品の形態を模倣した商品である被告商品を販売するにつき故意又は過失があったと認めるに足りる証拠はないから、不法行為が成立するとはいえず、したがって、右被告両名に対して損害賠償を求める請求は、理由がないといわなければならない。

四  争点4(被告豊田及び被告梅津は、被告アンフィニーの行為について商法二六六条の三所定の責任を負うか。被告豊田は、雇用契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を負うか)について

前記一の認定判断及び二1の認定事実によれば、被告アンフィニーは、原告商品の形態に依拠してこれと実質的に同一の形態の被告商品を製造、販売した、すなわち模倣商品を製造、販売したというにとどまらず、被告商品1・2・5・6の身生地の素材に原告がマツモト・テキスタイル等との間で原告以外の補整下首業界の同業他社には販売しないことを合意している品番二四八八〇の綿混トリスキンを使用するに当たって、伊藤忠商事株式会社を通じて右綿混トリスキンの仕入れを申し入れていったん断られたのに、旭織物株式会社を通じて、補整下着業界ではなく店舗販売(デパート、スーパー等)用であるということを確約した上で、すなわち偽りの事実を述べて、右綿混トリスキンを入手したものであり、また、被告商品の販売方式は、被告アンフィニーの代理店又はその下部組織であるサロンに、スターターキットと称する被告商品のサンプルを備え置き、顧客が試着の上、代理店又はサロンに商品を注文し、代理店又はサロンから被告アンフィニーに注文するという、原告商品と同じ方式であり、その際、被告アンフィニーは、原告と同様に代理店又はサロン向けに、販売用マニュアル(甲七九)を作成して配布していたが、この被告アンフィニーの販売用マニュアル(甲七九)は、全体として原告の「Maria Marian マニュアル」(甲七七)の大部分と「Maria Marian 販売マニュアル」(甲七八)の抜粋をそのまま合成したものということができ、更には、被告アンフィニーは、被告商品の製造についてフランスの「ルネ・ローラン」社と技術提携した事実はないにもかかわらず、表に「LUNELOURAN PARIS」、裏に「この製品はフランス国(ルネ・ローラン)との技術提携にょり日本で製作されたものです。」と記載した下げ札を被告商品に付すということまでしているのであるから、被告アンフィニーの行為は、債務不履行に該当するというだけでなく、自由な競争の範囲を逸脱して著しく不公正な方法により原告の法的利益を侵害するものとして、不法行為としても評価することができるというべきである。

そして、被告アンフィニーは、新製品(被告商品)開発の作業に入った平成五年八月頃当時、被告梅津が代表取締役、被告豊田外一名が取締役、重松克則が企画開発課長であり、ほかに四名程度の従業員がいたというような極めて小規模の会社であり、被告豊田及び被告梅津は、自ら被告商品を開発し、販売活動をしているのであるから、右債務不履行ないし不法行為の実行行為者自身であり、したがって、取締役又は代表取締役としての職務を行うにつき故意又は少なくとも重大な過失があることは明らかというべきであるから、右被告両名は、商法二六六条の三に基づき、互いに連帯して、被告アンフィニーとも連帯して、原告の被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。

五  争点5(被告らが原告に対して損害賠償責任を負う場合に、支払うべき損害金の額)について

そこで、原告が被告アンフィニーの行為によって被った損害の額について、以下、原告の主張に従い、順次検討する。

1  侵害行為についての調査費用

証拠(甲四七、六七の1・2、六九の1~11、七〇の1~3、七一、七二の1・2、七三)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らの債務不履行ないし不法行為に基づく責任を追及する本件訴訟を提起・追行するに当たり、弁理士に鑑定書(甲四七)を作成してもらうために一二三万六〇〇〇円を、被告商品等の写真の撮影代及びプリント代として五七万四〇四一円を、エム・オー・イーの閉鎖登記簿謄本等の取寄手数料として一万二六〇〇円を支出したことが認められるところ、これらの合計一八二万二六四一円は、被告アンフィニーの債務不履行によって生じた損害といわなければならない(なお、原告は、写真撮影料として右認定額を七六〇〇円上回る五八万一六四一円を請求する一方、登記簿謄本取寄手数料としては、右認定額を七六〇〇円下回る五〇〇〇円を請求するにとどまるが、甲第七三号証によれば、右七六〇〇円は写真撮影料ではなく、登記簿謄本取寄手数料であることが認められる。そして、調査費用の項目の中での区分の問題であるから、右認定が特に弁論主義に反するということもない)。

2  逸失利益ないし売上減少

前記二1認定の事実によれば、被告アンフィニーは、被告商品の販売を開始する前は、原告商品のみを販売していたものであり、被告商品の販売を始めたため、被告アンフィニーによる原告商品の販売高は、平成六年三月に被告アンフィニーの仕入価格で約一九九一万円に達した後、同年四月約一三一二万円、五月約一〇五八万円、六月約七九二万円というように大きく落ち込んだというのであるから、もし被告アンフィニーが被告商品を販売していなければ、その分だけ原告商品を販売していたものと推認することができ、したがって、原告は、被告アンフィニーの債務不履行により、被告商品の販売数だけ原告商品の販売数が減少し、そのため得ることができたはずの利益を失って損害を被ったというべきである。

被告アンフィニーらは、原告商品の売上げの減少と被告アンフィニーらの行為との間に因果関係はないとし、売上げの減少は原告が被告アンフィニーを倒産させようとして自ら原告商品の供給を停止したためであって、そのことによる損失を被告アンフィニーらが賠償しなければならないいわれはない旨主張する。

しかし、原告が被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止したのは、前示のとおり、被告アンフィニーが原告商品の模倣商品たる被告商品を販売するという本件代理店基本契約に違反する行為をしたためであるから、原告が被告アンフィニーに対する原告商品の供給を停止せざるをえなかったことによる原告商品の売上げの減少と被告アンフィニーの行為との間には相当因果関係があるというべきである。

しかして、前記二1(八)認定の事実によれば、被告アンフィニーは、株式会社レナウン・エスパに委託して、初回分として、被告商品1三〇七五枚、被告商品2三三二五枚、被告商品3一五〇〇枚、被告商品4五五七五枚、被告商品5五四〇〇枚、被告商品6一二七五枚、被告商品7三四二五枚を製造し、これを販売したところ、証拠(甲五一、五八、原告代表者)によれば、被告商品に対応する原告商品の代理店への卸価格、原告の仕入価格は、それぞれ原告商品1が八二五〇円、三九六〇円、原告商品2が七五〇〇円、三六〇〇円、原告商品3が九五〇〇円、四五六〇円、原告商品4が四五〇〇円、二一六〇円、原告商品5が五〇〇〇円、二四〇〇円、原告商品6が四〇〇〇円、一九二〇円、原告商品7が三七五〇円、一八〇〇円であること、原告商品の販売による粗利益に占める純利益率は九・五%であることが認められるから、原告商品一枚当たりの粗利益は原告商品1が四二九〇円、原告商品2が三九〇〇円、原告商品3が四九四〇円、原告商品4が二三四〇円、原告商品5が二六〇〇円、原告商品6が二〇八〇円、原告商品7が一九五〇円であり、これに対応する前記被告商品の販売数を乗じると、粗利益の合計は、原告商品1の一三一九万一七五〇円、原告商品2の一二九六万七五〇〇円、原告商品3の七四一万円、原告商品4の一三〇四万五五〇〇円、原告商品5の一四〇四万円、原告商品6の二六五万二〇〇〇円、原告商品7の六六七万八七五〇円の合計六九九八万五五〇〇円ということになり、純利益の合計は、これに九・五%を乗じた六六四万八六二二円ということになる。

したがって、原告は、被告アンフィニーの債務不履行により、得ることができたはずの右六六四万八六二二円の利益を喪失して同額の損害を被ったというべきである。

3  信用損害を含む無形損害

原告は、被告アンフィニーの行為により、(1)倒産の危機に瀕したこと、(2)代理店契約の解約や、契約維持のために仕入率の低減要求に応じざるをえなかったこと、(3)原告が被告アンフィニーを通じて有していた販売経路を喪失したこと、(4)被告商品の販売開始時期は、原告商品の投下資本の回収がピークに達し、かつ売上げが飛躍的に増大すると見込まれた時期であったため、原告は、前記逸失利益以上の損害を被っていることという事情に加えて、東京・福岡への調査出張や、身生地・レースメーカーなどへの調査依頼等のために多大の時間と労力を費やし、本来の業務たる原告商品の販売活動に専念できなかったことにより、多額の無形損害を被ったのであり、その額は一億円を下らない旨主張する。右主張の(1)、(2)、(4)の具体的事実はこれを認めるに足りる証拠がないが、前記認定事実によれば、原告は被告アンフィニーを通じて有していた販売経路を喪失したものと認められ、これにより原告は損害を被ったものと推認され、原告が調査等に時間と労力を費やしたことも容易に推認され、更に、前示のとおり、被告アンフィニーが原告商品の形態の模倣商品たる被告商品を販売したことにより原告の名誉、信用が著しく失墜させられたものというべきところ、これらの損害は、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるから、民事訴訟法二四八条に基づき、口頭弁論の全趣旨及び以上認定の一切の事情を考慮して、その無形損害の額を二〇〇万円と認めるのが相当というべきである。

4  懲罰的損害賠償

原告は、公正を旨とする裁判制度において、平然と証拠の捏造をし、虚偽の供述を繰り返す被告アンフィニーの企業体質、及び本件代理店基本契約によって総代理店の立場にある被告アンフィニーが原告商品のデッドコピーである被告商品を製造、販売した行為に対して、懲罰的意味合いをもつ損害額一〇〇〇万円が加算されるべきである旨主張するが、わが国の法制度においては、損害賠償はあくまで損害の填補を目的とするものであって、懲罰的損害賠償は認められないから、原告の主張は失当というべきである。

5  弁護士費用

被告アンフィニーの債務不履行は、前示のとおり不法行為としても評価できるものであるから、原告は、本件訴訟の提起・追行のために要した弁護士費用のうち一二〇万円は、被告アンフィニーの行為と相当因果にある損害として賠償を請求することができるというべきである。

6  合計

したがって、原告が被告アンフィニー及び被告豊田、被告梅津に対して賠償を請求できる損害の額は、右1の一八二万二六四一円、2の六六四万八六二二円、3の二〇〇万円、5の一二〇万円の合計一一六七万一二六三円ということになる。右額を超える部分の請求は理由がない。

第五  結論

以上のとおり、原告の被告らに対する請求のうち、被告アンフィニーに対し被告商品の販売の差止めを求める請求は理由があるから認容し、被告アンフィニー、被告豊田及び被告梅津に対する損害賠償請求は、右一一六七万一二六三円及びこれに対する平成七年一月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、被告鉄穴及び被告井上に対する請求は理由がないから棄却することとする(なお、原告は、右遅延損害金の起算日を平成六年五月一〇日とするが、前記第四の五において認定した損害は、平成六年五月一〇日の時点で一挙に生じたものではなく、被告商品の販売によって日々生じたものと認められ、前記認定の初回分製造の被告商品は、甲第五二号証〔被告梅津作成の在庫表〕によれば六か月分とされていることから、平成六年一二月末日までには全部販売されたものと推認されるから、遅延損害金の起算日は平成七年一月一日とするのが相当である。また、右認定によれば、損害は被告梅津が被告アンフィニーの代表取締役及び取締役を辞任した平成六年七月一四日よりも後に生じた分も含むことになるが、前記認定の初回製造分の被告商品は、被告梅津がその在任中に被告豊田とともに、販売することを当然の前提として、株式会社レナウン・エスパに委託して製造したものであるから、辞任後に販売された分も含め、その全数量について責任を負うべきものである)。

よって、主文のとおり判決する(平成一〇年二月二四日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 小出啓子 裁判官田中俊次は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 水野武)

物件目録(一)

別紙の写真に示す補整下着(正面写真並びに裏面写真添付)

1.ボディースーツ

2.ボデイーシェーバー

3.スリーインワン

4.ブラジャー

5.ロングガードル

6.ショートガードル

7.ウエストニッパー

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

物件目録(二)

別紙の写真に示す補整下着(正面写真並びに裏面写真添付)

1.ボディースーツ

2.ボディーシェーバー

3.スリーインワン

4.ブラジャー

5.ロングガードル

6.ショートガードル

7.ウエストニッパー

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

1。ブラジャー

形状 原告商品 メリフィーヌ25

1)カップ形状 完全フルカップ 3/4カップ

2)カップライン 水平線1本垂直線1本 斜蛇行線1本垂直1本斜向行線1本

3)下辺ライン(使用テープ幅) 30mm30mm 10-13mm10-13mm

4)腋布 カップ中心上辺から広く維持 カップ中心下辺から段階的に狭く

5)腋布幅 約11-13CM 約5-7CM

6)腋布接ぎライン(使用ボーン) 1本1本 2本2本

7)肩紐接ぎ8)肩紐方向性 腋布後部に則し、10-13CM垂直 腋布後部に接続、“チョン付は”肩外側方向

原告商品はカップに広幅レース(幅が110cm)を採用を使用しているので最大サイズのF100(アンダーバストが1M)迄も容易に作れるが、メリフィーヌ25の場合は細幅レース(幅が13-20cm)を使用している為にカップを構成する3枚のレース部分の寸法に自ずから制限がるので、原告の如く完全フルカップを構成する事に無理があるので、3/4カップの形状にしたと考察する。カップを3等分する部分の接ぎラインが全く違っていて、原告商品が垂直、水平ラインを採用しているに対してメリフィーヌ25は斜向、蛇行ラインを採用している。完全フルカップと3/4カップと言う形状の相違、カップ部分の構成ラインの相違が明確に有る。

下辺テープは原告が30MMと言う特殊なテープを使用し、メリフィーヌ25は一般的13-16MMを使用しいる事からカップ下辺に形状の相違点は明らかに出ている。

原告商品の腋布は腋部分の補整強化の為に腋の上辺から広い幅(約11-13CM)を保持しているがメリフィーヌ25の腋布は最大5-7CMの幅で段階的に細くなり最終2.7cmと成っていて明らかに形状が異なる。

原告商品の肩紐は腋布背部の全面(10-13cm)に取り付けいるが、メリフィーヌ25の肩紐は腋布背部のに肩紐の末端(10-13mm)を“チョン付は”しているので背部の形状は腋布の幅の極端な相違と併せて極めて異なる形状を呈している。

原告商品が効果的補整機能を重点におき、完全フルカップ、肩紐の垂直方向性、カップ下辺に特殊な幅の30mmテープの採用と腋布を幅広く保持する事等の独自性を意図しているには反し、メリフィヌ25は“PF90”(遠赤外線繊維)の使用で健康に良いと言う事と、2.5CM刻みの間隔での特異なサイズ展開(一般的に、原告商品も含めて、カップのサイズ間隔は、A70、A75、A80の如く5CM刻みである)を主たるテーマにしている、その点はメリフィヌ25の商品名はこの2.5CM刻から命名されているでも明らかである。

メリフィヌ25は“遠赤外線繊維による健康”と“2.5CM のサイズ展開”をテーマにして、いる。斯くの如く両者のテーマ、設計思想の違いから、形態が自ずから相違する事は当然の帰着で有り、メリフィヌ25は原告商品より先発で有っても、原告商品には反映する点は1点も無く寧ろ、形態の非類似性が顕著に現れている。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

2。ボデースーツ(1)

形状 原告商品 メリフィーヌ25

1)カップ 完全フルカップ 3/4カップ

2)カップライン 水平 1本 斜蛇行 1本

3)フロント 完全“V”形 V形を2分する中心線細幅レースのスカラップをデザインとして活かす事に重点を置いている。

4)フロント当布 Vゾーンに添ってVを補足造形するライン フロントから後腎部に流している

5)ウエスト背部 ウエスト中心線から上下に8-13CMの当布ライン ナシ

6)ヒップ部分 ウエスト当布とヒップ周辺の当布でヒップをオーバル(卵形)に造形ライン ナシ

カップについては既にブラジャーの項で述べたので省略する。

原告商品の前面のフロントパネル部分(レースの有る部分)はカップ部分と同じく

広幅(幅が110センチ)レースを使用しているは、如何なるサイズの商品でも完全な“V”ゾーンの形の構成する事が出来る点を考慮している。又、商品形状のトータルのテーマとして各商品の組み合わせ着用時にも“V”形を構成させる事を計算して、作成しているのでV形はカップ下から始まりボトム部分(ウエストから足繰り迄)の中心点迄に設計されている。

メリフィーヌ25はフロントパネルの部分に細幅のレースを使用してるが、13-20CMの限られた幅の制約が有るのでフロント中心線に左右から細幅レールを張り合わせる事が必要でフロント中心に線が必然的に入り“V”形は構成出来ない。

メリフィヌ25は使用している細幅レースの特徴であるスカラップ部分の端つまり耳の部分の波形凹凸をデザインとして強調する意図があり、フロントパネルの端

フロント中心部分(両方のカップの間)にもスカラップを敢えてデザインとして出している。。従ってメリフィーヌ25は細幅レースの幅の制限でフロントの形状をV形にする事は物理的に不可能であり、その意図は無く、寧ろ細幅レースの耳のスカラップ部分をデサインとして活かす事をてテーマとして位置付けている。

原告商品はフロント当布も“V”形の造形を補足する意図でVに添う形を構成され居るが、メリフィーヌ25は“V”を構成出来ないし、又その章図も無いので一般的形に収まっていて、原告商品と全く相違する形状である。

原告商品の背部はウエスト部分の中心線から上下に8-13CMの当布とヒップ周辺の当布でヒップ部分がオーヴァル(卵形)に造形されるラインで構成されている。

メリフィーヌ25では一般的ヒップアップ当布があるだけで、形状は全く違う。

原告商品は効果的な補整機能を重点におき、フルカップ、ウエストの当布の二重構造ヒップのハート形造形の為のヒップ周辺の当て布配置を意識して、且つ、“V”ゾーンを単品として、又組み合わせ着用時の一体性を意図して構成しているが、メリフィヌ25は“遠赤外線による健康”、“2.5CMの特異なサイズ展開”のテーマに重点を置いて、デザイン的には細幅レースのスカラップを活かす事にしている。

テーマと設計思想の違いから自ずと形態は類似し得ない事が如実に検証出来る。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

2。ボデイースーツ(2)

全面フロントパネル部分に使用されているレースの種類(幅)が異なる事に拠る形状の違い。

原告商品:110CMの広幅レースであるから幅の制約が無く造形出来る。

メリフィーヌ25:13-20CMの幅の制限があるので、レース幅を組合せる

制約の中で、派生的にレースの繋ぎのライン出る欠点がある。逆にレースのスカラップ(レースの端の波状の凹凸部分)をデザインに活かせるメリットがある。

原告商品

メリフィヌ25

<省略>

3。ボデーシェパー

メリフィヌ25の商品構成の中には原告商品のボデーシェパーと対比する商品が組み入れられてい無い。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

前側

後側

原告商品と対比する商品の構成がない

4。ロング ガードル

形状 原告商品 メリフィーヌ25

1。前面フロント 完全“V”形 V形を2分す中心線ある。“V”に該当せず。

2。大腿部との接ぎ前面後部 ラウンデー(丸い)ライン同じラウンデーライン 鋭角なラインナシ

3。ヒップ部分 ハート形を形成するライン 特に意図したラインなし

4。大腿部 前面の一部を除いて、全体の75%に当布が有る 後部に全体の25%の当布がある。

5。大腿部前面 当布接ぎライン2本 ナシ

6。大腿部後面 ナシ 当布接ぎライン2本

7。裾レース部分 レースの裹は裾一杯まで、身生地と当布があるので、レースガ不透明 レース部分はレースのみなので、レースに透明感がでる。

原告商品は前面のフロント部分に広幅レースを使用して居るので、完全な“V”形を構成し、組み合わせ着用時にも“V”形を形成する事を意図して設計されている点。メリフィーヌ25は細幅レースを使用してるので幅の制約の為にV“形を作れないし、又“V”形を意図していない、寧ろ細幅レースのスカラップをデザインのとし活かす事に意図が有る点から来る明らかな形状の相違はボデイースーツの項で詳しく述べたので省略する。

原告商品は大腿部の付け根部分のラインに前、後共に円やかなラインを意図して作っているが、メリフィース25では前面は鋭角なライン、後部にはラインが無い事を特徴付けている。又原告商品は大腿部補整の為にの前面の一部を除いて全体の75%に当布がしてあるので当布ラインが前面に2本顕著に出て居るが、メリフィヌ25は後部に軽く約25%の当布を付けて居るので当布ラインは後部に2本出ている。設計思想の違いに拠り2本のラインが前と後と顕著に相違している。

原告商品はヒップ部分をハート形の造形を強調する当布ラインを構成している、メリフィヌ25は特に記すべきラインは無く、著しく形状の違いを呈している。

原告商品は大腿部の補整を意図して商品の裾、裾レースの下辺一杯迄身生地を当布を付けているのでレースが不透明な印象を与えるが、メイリフィヌ25には特に大腿部の補整を意図して居ないのではレースだけなので軽く、透明感を与えている。

いすれの箇所を個々に検証しても類似点を見いだす事は困難で、際立った相違がある。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

5。ショート ガードル

形状 原告商品 メリフィーヌ25

1。前面フロント 完全“V”形 V形を2分する中心線がある、“V”形に該当せず。

2。前面当布接ぎライン 足繰り迄当布があるので上下にラインが無い。 腹部中心側部に掛けて当布が襷掛けになり帯状のラインが腹部下方に向っての当布ラインと交差して顕著な“T”字形ラインを構成してイる。

3。ヒップ部分 ハート形を造形するライン 特に意図したライン無し

原告商品が“V”形を意図して構成させている点、ヒップ部分のハート形の構成等は独自性の高いものであり、メリフィヌ25では“V”の形を作る事を意図して無い事、又使用レースの幅の問題で物理的に出来ない事、ヒップ部分でハート形の如く顕著な特性の無い事はボデースーツの項のフロントパネル部分で、又ロングガードルの項でも述べたので省略する。

前面の当布ラインについてはメリフィヌ25は原告商品と違って逆に“T”字形の帯状の特異なラインを構成している。

従って相違点が多く、類似性を見る事は出来ない。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

6。ウエスト ニッパー

形状 原告商品 メリフィヌ25

1。前面フロント “V”形で、底辺を削除 5角形に中心線がある。

2。腋側ライン ウエストの中心線から上下に幅8-10CMの当布があるので当布ラインが顕著に出ている。 ナシ

3。背部ライン ウエストの中心線から上下に幅5-6CMの当布があるので当布ラインが顕著に出ている。 ナシ

原告商品はこのウエストニッパーを除いて全て前面フロントに完全な形で

“V”形を構成しているが、此のウエストニッパーはショートガードル、ロング

ガードル、ボデースーツ、シェパーとの組み合わせ着用を前提としており、組み合わせて着用して際にその他の商品のフロント部分の“V”形と補完仕合って、完全な“V”形を構成する様にあえて“V”形の底辺部分を削除している。

メリフィヌ25は5角形に近い形で、類似性は全く無く、異なった形状である。

原告商品はウエストを中心として5-10CMの当布を二重構造で取り付けいるのでウエスト部分に当布の2本のラインが明確に出ているが、メリフィヌ25においては二重構造が採用されていない。

フロントパネルの形状の違い、ウエストの二重構造からくる明確な2本のライン等で全く異なった形状である事が明白である。

着用時の“V”形の構成

原告商品のブラジャー、ウエストニッッパー、ショートガードルの組合わせ着用の一例

ウエストニッパーの“V”の底辺の削除された部分をガードルの“V”形の底辺が補完して一体と成り、完全な“V”形を構成させているが明確に出ている。

<省略>

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

7。スリーインワン

形状 原告商品 メリフィーヌ25

1。前面フロント 完全“V”形 Vを2分する中心線があり“V”形に該当せず。

2。フロントのレース位置 裾迄一杯 ウエストライン迄

3。コイルボーンライン 前面に縦2本腋側に縦2本背部に縦2本 ナシナシナシ

4。腋側ライン ウエストの中心線から上下に幅15-7CMの当布があるので2本の当布ラインが顕著に出る ナシ

5。肩紐取付タブ 2ケ所 1ケ所

6。ボストンコキ ナシ 有り

原告商品が前面フロント部分の“V”形を意図して構成しているが、メリフィーヌ25は使用レースが細幅の為に完全なV形が作れないし、意図していない事はボデースーツ、ガードルの項で述べた通り。

原告商品はコイルボーン(金属の針金を螺旋状にした棒状のもの)を7本縦に入れてるのでコイルボーンのラインが6本顕著に出る(前面中心の1本は広幅レースに隠れてラインとして見えない)。メリフィーヌ25はコイルボーンを採用していないので当然ラインが無い。

原告商品はウエストの中心に幅15-7CMの当布を二重構造で取付けているのでウェスト部分の側側、後側に当布の2本のラインが明確に出ているが、メリフィーヌ25には一切無いと言う形状の明らかな違いはウエストニッパーの項で述べた。

原告商品は肩紐取り付けタブ(装着部品)を2ケ有り、メリフィヌ25は1ケで有る。又、逆にメリフィーヌ25はボストンコキ(ガーターベルトの機能で、ストッキングの着用のための装着部品)を採用している。

スリーインワンは機能性とお洒落性を追求する商品なので、カップをの形を3/4或いは1/2の形にして、肩紐を取り外してショールダレスのアウターにも対応できる様に作られのが一般的で有るが、原告商品は特に機能性、補整機能に重点を置いて設計されているので、コイルボーンを縦に7本採用し、ウエストに広い幅で当布を二重構造で採用している。メリフィーヌ25はお洒落性に比重を掛けた設計思想で、コイルボーン、当布を採用せず、ボストンコキを採用しているでも明らかで、細幅レーのスカラップをデザインの中に活かしている。

設計思想の違いが商品に如実に反映して、相い容れ無い、異なる形状を呈している。

原告商品

<省略>

メリフィヌ25

<省略>

1。ブラジャー

従来商品がバストの周辺の背部、腋部の脂肪を無理に乳部に圧し集め、バストの形を作る強制補整タイプが主流であるが、無理が有るので一時的効果しか期待出来ず、着用感が悪い点が指摘されている。

アンジェラは無理の無い継続的着用で自然に補整効果が期待出来る事を図り、バストの全体を優しく包み込む為にカップの形状は完全な3枚接ぎフルカップを採用、バストアップの為に肩紐をカップ中心から垂直に引き上げ、バスト下部を安定させる為に30mmの起毛伸縮性テープを取り入れる。又、腋部、背部の補整の為に腋布はハードタイプの56Gのパワーネット(敢えて、伸縮性に優れた綿混のトリスキンを使用せず)で最大限に広い面積を構成させる。最大カップF100の特注サイズにも対応出来る様に広幅レース(幅110CM)採用する。

独自性と差別化のポイント

1。完全3枚接ぎフルカップ

2。肩紐の垂直方向性、

3。下辺安定作用の為の30MM起毛テープ

4。56Gのパワーネットで腋布の面積を最大限に広くする。

<省略>

2。ボデースーツ

従来商品は身生地にパワーネットを使用して、身生地のハード性で補整をしていたので着用感が悪い点が指摘されている。

綿混紡トリスキンの特性の薄く、軽く伸縮性に優れた点を活用して、ソフトな着用感で、且つ、補整機能を充実する。

カップ部分はブラジャーと同じ形状と機能を採用する。

腹部はフロントパネルに広幅レースと無伸縮性の素材を裹打ちで補整効果を出す。

フロントパネルの形は“V”の形を作り上げ、且つ、その他の商品と組合わせ着用の時にもと相互に補完して“V”形が一体として造形出来る事を計算する。

ウエスト部分の補正の為にウエストラインに沿って8-10CMの当布を当て、

二重構造とする。

ヒップアップの為とヒップの形をオーバル(卵形)に造形する事を意図してヒップ周辺に当布をする。

独自性と差別化のポイント

1。綿混トリスキンを補整下着業界ではアンジェラの止め柄とする。

2。フロントパネルに“V”の造形と組合わせ着用時での一体性

3。ウエスト補整の為の当布の二重構造

4。ヒップアップ効果とヒップのオーバル造形の設計

<省略>

3。ボデーシェパー

ボデースーツの着用に抵抗のある人、身長が高くて、ボデースーツの着用に問題の人に対応する為の商品。

機能と形状は基本的にボデースーツに準ずる。

丈はヒップ部分を充分に包み込む様にする。

裾が捲れ上がらない様に高伸縮性のストレッチレースを採用する。

独自性と差別化のポイント

1。止め柄の綿混トリスキン

2。フロントパネルの“V”の造形と組合わせ着用時の一体性

3。ウエスト補整の当布の二重構造

4。ヒップを抱合する丈

5。捲れ上がりを防ぐ高伸縮性レースの採用

<省略>

4.ロング ガードル

腹部はボデースーツと同じく広幅レースと無伸縮素材で補整し、フロントパネルは“V”形にし、組合わせ着用時にも“V”が一体性で構成される事

ヒップ部分はヒップアップ効果とハート形に造形できる事を計算して当布を裏打ちする。

従来商品では意識されていない大腿部の補整を特に意識して、大腿部の75%に当布を裹打ちする事とレース部分の末端迄身生地と当布を裹打ちをする。

裾レースは4”のストラッチ性のレーシリバーの高伸度を採用し、止め柄とする。

独自性と差別化

1。止め柄の綿混トリスキン

2。4”レースを止め柄にする。

3。フロントパネルの“V”形と組合わせ着用時の一体性

4。ヒップアップ効果とヒップ部分んのハート形造形

5。大腿部の75%に当布を裏打ち

6。レースの末端迄身生地、当布を裏打ち

<省略>

5.ショートガードル

腹部、ヒップ部分はロング ガードルの形状と機能を踏襲する。

従来商品は着用時に太ももの付け根の部分が擦れて痛いと言う事が指摘させているので、特に足繰り部分をハイレッグタイプとして、着用時に違和感が無く、且つ、ファション性をはかる。

独自性と差別化のポイント

1。止め柄の綿混トリスキン

2。フロントパネルの“V”形と組合わせ着用時の一体性

3。ヒップアップ効果とヒップ部分のハート形の造形

4。ハイレッグの足繰り設計

<省略>

6。ウエスト ニッパー

身生地はハード性を要求されるのでトリスキンに代えて56Gのパワーネットを使用、前面は広幅レースと無伸縮性素材で腹部補整、ウエスト部分の補整をより効果的にする為にウエストラインに48パワーネットを5-10CM幅で二重構造とする、

コイルボーンは7本を起毛テープで包み込み取り付ける。

フロントパネルは“V”形で、且っ組み合わせ着用時に一体性がでる事を計算する。

フックアイは3例10段を採用する。

独自性と差別化のポイント

1。フロントパネルの“V”と組み合わせ着用時の一体性

2。ウエスト補整の為の二重構造

3。7本のコイルボーン

<省略>

7.スリーインワン

機能性とお洒落性を要求される商品なのでカップは3/4とするが、

機能性に重点を置く、ハード性が要求されるのでトリスキンに代えて56Gパワーネットを採用する

肩紐を取り外しても着用できる様にする。肩紐と取り付けタブ(装着部品)を2ケにして自在に選択できる様にする。

コイルーボーンを7本採用する。

ウエスト部分は48パワーネットを二重構造にする。

従来商品に見受けられる裾レース、ボストンコキは取り入れない。

独自性と差別化のポイント

1。フロントの“V”形、と組み合わせ着用時の一体性

2。2ケの肩紐タブ

3。ウエストの二重構造

<省略>

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